ちびわたとちゃいパパ２〜もっとなかよし〜

さんいち ページ14

や、やめろ、ご近所迷惑だ。まだ朝も早いから！
必死にあやしてなだめすかしてギャン泣きから小泣きになったので背中をぽんぽんしながら
「どーしたの？わた。どーして泣いちゃったの？」なるべく優しく問いかけると
「グス…しゃんといち、ヒクッ、ないと、グスン…あいし、ないない、よぉお…グスン」
俺の胸に顔を押し当てたまま渉がグスグスと訴えた。

あいしは、アイスね。…ん？あー！





「あいしー！！！！」
「わーた、走らないよ！」
保育園の帰り、近所のスーパーにつくと渉が繋いでいた手を離して走っていく。

とぉっとこぉー走るよ、わた太郎♪
だぁ〜い好きなのはー、アーイスクリィムー♪

渉が一目散に向かったのは…
アイスクリームショップのサーティワン。
そ、さんといち、ね。

ちょっと高いサーティワンのアイスは毎月31日は安くなる。
7月末に安いならと二人で食べたんだけと、初めて食べた渉はすっかり虜になりスーパーに行くたびにチビで見えないくせにアイスケースに噛り付いて「食べる」ときかないので、根負けして
「31日にしかウチは買わないからね。特別だからね」と念押ししながら先月末に食べたんだった。

それを指折り数えて楽しみにしてたのに、今月は31日がないからアイスが食べられないと思って大泣きした、と。
食べ物への執着が恐ろしいよ、渉さん。


苦笑いしながら追いかければ少し行列。最後尾にいっちょまえに並んでる。
アイスケースの中が見えるように片手に抱っこしてやって二人で覗き込む。
「どれにする？」
「んとねー、ばばなとちちごのとねー…。ちゃいはぁ？」
「ちゃいはねぇ、限定のと…」


2種類ずつ選んでからいつものカップではなく渉はコーンにすると言い張る。
「前にアイス落として泣いた人だぁれ？カップにしときな」
「ちゅぎはおとしゃないから！」
「ほんとかなー。気をつけてよ？」
「だいじょおぶ、だいじょおぶ。まかしぇてぇ」
口だけは達者で、まったく信用ならないなぁ。

持ってあげるよと言ってもきかないのでしぶしぶ渡すと、アイスを受け取った渉は
「しょーっと、しょーっと…」
かなり慎重に店横のイートインスペースまで移動する。
子供用の低いベンチにそーっと座る様子につい笑っていると
「ちゃい！あくちて！ちゅぷん、ちゅぷん！」
と、早く来てスプーンをよこせと怒られた。


口の周りをべたべたにしながらも落とさずにコーンもばりばり食べきる渉に、俺はまた成長を感じるのだった。

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