ちびわたとちゃいパパ〜ふたりはなかよし〜

けっこん ページ44

「わたは、赤ちゃんなの？」
渉は鼻を啜ってコクンと頷いて、
「わた、としくんと、たまちゃんの、あかちゃん…」
小さな声でつぶやいた。

「そっかぁ。二人と仲良しなの？」
「ん…なかよちらよ。わたね、としくんとたまちゃんと、けっこん、しゅるんあよ…」
「は！？え！？け、けこ、結婚！？」
突然の結婚発言に声が裏返り、頭の中に教会の鐘の音が鳴り響きる。


『ちゃいすけ。今まで育ててくれてありがとう』
モデルばりに黒のタキシードを着こなした大人になった渉がバージンロードの前で俺にかしこまって頭を下げる。わ、渉ぅ！……いや、わたなら白のタキシードのが似合うかな。いや、シルバーか？あ、紋付はかまも捨てがたい。はかま姿の渉が三つ指ついて『ちゃいすけ。今まで育ｒｙ……ってチガウチガウ。うっかり渉が婿に出ちゃう妄想で泣くとこだった。


きっと結婚って意味はわかってなくて、仲良しだとするものって思ってるんだろうな。んー。どうしたもんか。
しばし考えてから、スマホを操作し画面を渉に見せた。

「わたー。これ、誰だかわかる？」
「？？だぁれ？」
「赤ちゃんの時のわただよ。」
「えぇ〜？こぇわたぁ？ちがう、わたじゃないよ」
渉は産まれてすぐの小さい自分の写真を見て首を横に振る。

「ふふ。わたなんだよー。小さくってかわいいね？」
「んー。おしゃるみたいね？」
確かに産まれたての赤ちゃんってしわくちゃで赤くって猿っぽい。笑いながら次の写真にすると飛んで半年後の渉になる。
「ほら？これならわたでしょ？ぴょんぴょんも写ってるし」
「あえ〜？わた、ちいさいねぇ？」小さい自分が納得できないようで不思議そうにしている。

写真を次々に見せながら

おしゃぶりがないと寝れなかったこと、

手や足の指の間にいつもカーペットの繊維を握り締めていたこと、

離乳食が嫌いで口に入れてもプップと吐き出すので困ったこと、

いないいないばぁや顔に息をフッとかけられるのが大好きでよく笑っていたこと、

お風呂の前にオムツ取るとおしっこ飛ばしてきたこと、

初めて自分でお座りできたり、ハイハイできたときのこと。

赤ちゃんのころの話をすればおもしろそうに聞き入っている。
ふぅー、よし。聞く体制はできたな。本題に入ろう。

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