ちびわたとちゃいパパ〜ふたりはなかよし〜

こどものひ ページ38

「わた！今日もクロネコくるよ。」
「きゅろねこ？！なんのはこくるぅ？」
よく晴れたこどもの日、ベランダでこいのぼり相手に戦いごっこをしている渉に、洗濯物を干しながら今日も荷物が届くことを伝えると、嬉しそうに中身を聞いてくる。

「それは内緒ー。届いてからのお楽しみ〜。」
「ないちょー？おとのしみー？」

話してるとタイミングよくインターホンが鳴る。
「あ！きゅろねこだー！！」
あっという間に玄関に走り出す渉に、俺は布団を干していて出遅れる。

クール便を受け取ると、「今日はこどもの日なんで！」とお兄さんが渉にクロネコのマスコットバッジをくれた。
大喜びの渉はつけろつけろと、それこそ猫のようにまとわりつくので「はいはいはい。置いてからにしてー。」といなしながらダイニングテーブルへ荷物を置き、渉のポロシャツの胸ポケットにバッジをつけてやれば得意満面で小躍りしている。

それを横目に開け始めれば、渉が「なになに〜？」とイスに登って跳ねながら箱を覗き込む。
「ジャンプやめれ。落ちると痛いぞ。」たしなめながら箱からとりだしてテーブルに並べれば、
「こえ、なぁに？」と不思議そうにする。

「これはねぇ、ちまき寿司！」
「ちまきしし？」
「そ。あとね、柏餅！」
「たちわもち？」

お取り寄せしていたちまき寿司とあんことみその柏餅、あと中華おこわのちまきをじゃーんと並べ見せれば、渉が拍手してくれた。

「今日はこどもの日だから、保育園で作った兜かぶって、こいのぼり見ながら食べよう！」
「あい！ちゃいのかぶとちゅくる！」

渉がイスからうんしょと降りて、古新聞を引っ張り出してきて格闘しだす。「いっぱい、おると、できう…」ぶつぶつ言いながら折っているけど、あれじゃたぶんできないな。でも作ってくれようとしてるのがめちゃくちゃ嬉しい！

「ちゃいも一緒に作っていい？」
渉を包むように後ろに座り一緒に兜を作る。一生懸命な小さい手があったかくて。
兜を被って二人で食べたちまき寿司はおいしくて。
なんだか胸がいっぱいになった。


―親父もこんな風に、俺の成長を喜んだんだろうなと、ベランダで踊るこいのぼりを見ながら思う。
俺は意を決して、兜を被ってこいのぼりと写る渉の写真をチョイスして、親父に「ありがとう。元気です。」と短いメールを送った。返事はないだろうけど、喜んでくれるのを信じて。

「さ、わた！柏餅も食べよっか？」
「あーい！にゅにゅものむ〜。」
「えぇ？牛乳は合うかなぁ？」

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