ちびわたとちゃいパパ〜ふたりはなかよし〜

ぽりぽり ページ30

「もー、わた。ダメだね〜わた。」と俺の言い方を真似た渉の声がする。

最近、渉は、何か失敗すると自分で自分にダメ出しをする。その他人事のような話し方が面白いのと、俺の口調を真似ているのが親子だなと感じられて嬉しくて、寝たまま聞き耳を立てて様子を伺う。


びりりり！
ばりばりばり、ばり…しゃく
ポリポリ。ポリポリポリポリ。


ビニールを開く音、砕いて掬う音、そして、咀嚼する音…おいおい、何食ってんだ。

さすがに起きて叱らないとなぁと思ってまだ目を閉じたままタメ息をついていると、ポリポリ音がだんだん近づいてくる。ポリポリはパラパラと床に散らばる音を混ぜ、ボリボリという音に変化しながら俺の眼前までやってくる。
そして突如、むにょっと口に押し付けられる渉の小さな手と…細かく砕かれたチキンラーメン。

「はい、ちゃいもあーんよ、あーんちて？チキメンよ！」

ぶふっ。つい噴出してしまった。優しさなのか、共犯にしたいのか。
目を開けてグイグイ押し付けられた渉の指をチキンラーメンごとハムッと食べてやると、にへーっと笑ってさらに指を押し込んでくる。苦しいわっ！

ペッと渉の手を吐き出して「わかった、わかった。もう起きる。朝ごはんにしよ。」と言えば「チキメーン！」と言ってダイニングへ走っていく。早朝からほんと元気だな。


「もー、わーたぁ。床に落ちたの拾いなさーい。」もそもそ起きながら呼び戻せば、
「もー、わーたぁ。もー。」と、また俺の真似をしながら床にしゃがみこんで溢したチキンラーメンをちまちま拾い出す。
その横をすり抜けてダイニングへ行けば、床に散らばるチキンラーメンの個包装を拾い集め渉が開けられないパントリーの中へそっとしまう。

まだ開ききらない目にメガネをかけて、渉が開けてしまった分をご所望のひよこちゃんの丼にガサッとあける。電気ケトルをセットして、冷蔵庫から卵を出してぱかっとチキンラーメンの上に落とす。

「ちゃいー、キレしたー。」
「んー、いいこー。」
床をキレイにした手を一緒に洗ってるとちょうどお湯が沸く。

テーブルの縁にかじりついて丼を見つめる渉から少し離しながらお湯をゆっくりかけていく。
「わあぁぁ…」透明な白身が白く色を変えていく様に渉は目をキラキラ輝かせて感嘆の声をあげる。ふふっ、どんだけ楽しみなんだよ。

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