16:波長 ページ16
「…………？」
ぽかんとしたまま首をかしげる彼女に、僕の方も開いた口が塞がらない。
空中に描かれた"少年"の絵は、時間経過と共にぼろぼろと崩れ落ちていく。
──何故だ？
僕のヘブンズ・ドアーで本にできない人間など今までに居ただろうか？
僕の原稿を見なかった東方仗助を抜きにしたって、僕の能力は"成長"しているのだ。
「波長が、絶望的に合わないのか……？」
僕と彼女は、つまり、相性ってヤツがよくないのか。
「キシベさん？」
「……いや、何でもない。虫が飛んでいたのが気になっただけだ」
運転席に乗り込み、アクセルを踏み込む。
彼女の家の有り様を思い出して、ふとミラーを確認してみれば、こちらを見詰めていた瞳と視線が絡む。
ぎょっとしたが、反らすのも何だか負けたような気がして腹が立つので「なんだ？」と尋ねれば、彼女は少しばかりはにかんで、「いや、別に」と呟いた。
タイミングを計ったかのように、不快な電子音が鳴り響く。
彼女の携帯電話らしい。
すみませんと謝罪の言葉を口にした彼女は、なれた手付きでそれを操作すると「はい、浅羽です」と答えた後、何度か「はい」「えぇ」「わかりました」とのやり取りをしてから通話を終えた。
「すみませんキシベさん、急患で、病院に帰らなくちゃあならなくなりました」
「はぁ！？」
思わず急ブレーキを踏んだ僕に、前のめった彼女は前の席に強かに頭を打ち付けていた。
「おいおいおいおい！！君は今日、たった数時間前に退院したばかりなんだぜ！？」
「いや、まぁ、そうなんですけど……」
「あの病院に外科医ってのは君しか居ないのかよ！」
そう言う訳じゃあないですけど……。と困ったような顔を見せる彼女に、僕は盛大に溜め息を吐き出す。
「さっきのお料理のお陰で調子もいいですし」
「……そう言う問題じゃあないんだよなァ〜〜！！」
気持ちを落ち着かせるためにも舌を打ってから、アクセルを踏み込む。
急発進したために今度は後頭部をシートに打ち付けたらしい彼女の唸り声を聞きながら、僕は再び、ぶどうヶ丘総合病院へ向かった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジョジョの奇妙な冒険」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちよ - 花京院の名前に反応してしまいました！露伴先生も花京院も大好きなキャラなので興奮しながら読んでしまいました^^; (2020年12月30日 4時) (
レス) id: b3a59bf25e (このIDを非表示/違反報告)
なな - 更新楽しみにしてます！！ (2020年11月20日 0時) (レス) id: 990f265493 (このIDを非表示/違反報告)
豆(プロフ) - レス遅くなってすみません…。露伴先生かっこいいですよね〜〜！！確かに最近は五部夢が多い印象ですねぇ……。 (2020年9月27日 20時) (レス) id: 1f2cc878d7 (このIDを非表示/違反報告)
せいちゃん(プロフ) - 岸辺露伴先生がジョジョで1番好きなキャラなので、めっちゃ楽しく読ませて貰いました！最近あまり4部の小説書いてる人が少なかったので、嬉しいです！これからも更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2020年9月19日 18時) (レス) id: da5e2670c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：豆 | 作成日時：2020年9月10日 17時
