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薄暗い部屋で、アキラは目を覚ました。
やがて鳴り出したアラームを、気だるそうに止める。ロック画面には、桃城からのメッセージが一件。
(……すっげー懐かしい夢見たなあ)
ぼんやりとした頭を醒ますべく、カーテンを引いて朝日を浴びた。
正直、外出できる心持ちではなかったがドタキャンする気にもなれず、彼は手早く準備を済ませた。昔の夢を見たのだから、尚更である。
待ち合わせ場所に向かうと、そこには既に桃城と。その彼女が手を振って待っていた。
桃城が同じ大学だと知ったのは、大学のオリエンテーションの中で。その彼女＿＿かつて自分が恋焦がれていた橘杏がまた同じ大学で、高校に上がる前からずっと桃城と付き合っていたと分かったのは、被った授業の中で。だった。
自分は一度、あの時振られた身だからと割り切り、二人との関係は不思議なことに続いていた。
(思うと変な話だよな……俺のことおちょくってたあいつが、杏ちゃんのこと実は好きだったんじゃ……あれ？ )
ふと、思考が止まった。
ぐるりと記憶が回り、歪む。どこかの、誰かの記憶。もう一つの記憶が混ざり、混ざり、分からなくなる。
この記憶は誰のもの？ あの喫茶店はどこ？ 自分は何を覚えていて、何を忘れている？
本物の記憶は、どれ？
痛みが走る。頭を抱えて蹲ったアキラに、真っ先に桃城が駆け寄った。
「おい神尾！ 大丈夫かよ！？ 」
笑顔が映る。記憶が蘇る。嗚呼そうか、こいつは。この男は。
「……なあ……桃城……」
蕩けだしたクリームが口内を満たす。アクセントのリキュールが、彼の脳内を蝕んで酔わせ、狂わせた。
「俺、杏ちゃんが好きって、言ってたよな……？ 知っててお前、奪ったんだろ……？ 」
「は……？ っ！ 」
憎い。憎い。どろどろと溢れ出した思いが彼を奮い立たせ、桃城を襲った。
首筋に伸びた手にこれでもかと力が籠る。憎い相手の苦しむ顔に、彼の頬はすっかり緩んでいた。
うざかった。嫌いだった。目に付いていて、どうも厄介だった。中学の時、試合で対峙したあの日から。
ただ、あの日の自分を変えただけなのに。あの日告白しただけなのに。
力尽きた友人を見下ろしながら、意図知らぬ涙を流し彼は不気味に笑っていた。
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幻想曲(プロフ) - 神の子依存症@鈴歌さん» ありがとうございます！表現の仕方については私もこの作品を作る上で気をつけている点なのでそう言っていただけて嬉しいです！頑張ります！ (2019年4月5日 16時) (
レス) id: 530eb924bf (このIDを非表示/違反報告)
神の子依存症@鈴歌 - 初コメ失礼します。情景が浮かぶような、風景画みたいな表現のしかたと不思議な切ない話に惹かれて前作から読みました。更新楽しみにしています。無理しない位で頑張って下さい (2019年4月5日 15時) (レス) id: af6ad853e4 (このIDを非表示/違反報告)
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