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――やっぱり、月城さんはオレ達の事を監視してたっつーことか。
オレはそう決めつけざるを得なかった。
そうでもしないとこの行動には違和感がありすぎる。
月城さんがどこまでオレ達の事を知っているのかはわからない。
オレが工藤新一であるということも、もしかしたら既に奴から伝えられているかもしれない。
全て知った上でオレ達と……。
「あの……、車。今は大丈夫ですけど、ここそろそろ交通量多くなるので、早く停め直した方が良いですよ」
月城さんを見つめながらそう考えに耽っていたオレに、メッセージを打ち終えた月城さんは一度目を合わせると、すぐにジョディ先生に向かってそう言った。
「あっ、……ええそうね」
ジョディ先生は、後ろに停まるベンツに目を向け、月城さんにはにかむ。
だが、そのすぐ後にもはや聞き慣れてしまった独特のエンジン音に、オレとジョディ先生は反応した。
その顔は先程オレと組織の奴らを追っていたときの、緊張感のある表情に戻る。
「彼らの車は米花五丁目から西へ、追跡を……」
ジョディ先生は、車に付いた無線機で他のFBIの仲間に指示を送った。
「まあ、途中で撒かれてしまうだろうがな……」
運転席から降りてきたジョディ先生の上司であるジェイムズさんが諦め気味にそう言う。
盗聴器や発信器なしに奴らを追うのは至難の業だ、彼の言うことはおおむね現実のものになるだろう。
そんな事を考えていたオレは、危うく無言で立ち去ろうとする月城さんに気付かない所だった。
オレは見事に気配を消してオレの脇を通り過ぎた月城さんを、振り返って呼び止める。
「あっ!月城さん待って!」
「……ん?」
少し億劫そうな声を上げ、こちらを振り向いた月城さんと目が合った。
オレは月城さんを呼び止めたは良いものの、その後にかける言葉が見当たらなかった。
本来なら、今ここでFBIの彼らに月城さんのことを捕まえてもらうべきであろう。
いや、そうしなくてはならなかった。
なぜなら彼は、オレの、オレ達の敵なのだから。
そして、ベルモットと同じで、灰原の正体を知っていて隠している人物なのだから。
――だが月城さんは、奴とは何かが根本的に違う。
オレの微かな違和感が、たった一言「月城さんは奴らの仲間だ」とそう言うことを拒んでいた。
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izawa(プロフ) - 東雲虚さん» ありがとうございます! (7月24日 21時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
東雲虚 - とても面白い作品でした 更新楽しみに待ってます! (7月10日 14時) (レス) @page41 id: 272de617c9 (このIDを非表示/違反報告)
izawa(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!修正しました! (2022年10月5日 19時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 51話、ブロンズヘアーじゃなくて、ブロンドヘアーです。 (2022年10月5日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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