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◇◆◇・◇◆◇
「え?」
「何?」
黒ずくめの奴らの会話を聞いている途中、唐突に耳元でパンッという破裂音がした。
オレはその音が、盗聴器が壊れた音だと悟ると、何が起きたと顔を屋上に向ける。
奴らはもう、おっちゃんを狙っていなかった。
ジョディ先生と会話をしていた月城さんも、オレ達につられて顔を見上げる。
「……なんの音です?今の」
オレとジョディ先生が屋上を見上げた所で、月城さんが耳を弄りながらオレ達に尋ねる。
オレ達は顔を見合わせ、お互いに気まずい表情をした。
「さ、さあ……」
ジョディ先生が不格好にそうはぐらかすと、意外にも月城さんは「そうですか」とだけ言って、それ以上の追求はしてこなかった。
その時の彼の顔は、本当に無関心のソレであった。
――何故なにも聞いてこない。
オレは月城さんに不信感を募らせた。
先程の奴らの話は、オレにとって、とても有意義な内容だった。
なにせ今、オレの目の前に立つ男――月城翔真は、組織の一員であると、そう奴らが話したのだから。
正確には、奴らは月城さんの名前を出してはいない。
しかし、ベルモットがオレらを見て『あの子』とそう言った。
この場にいたのはオレ、ジョディ先生、月城さん、おっちゃんの四人。
まだこの時点では誰が『あの子』なのかははっきりとしない。
だが、ベルモットは次にこう言ったのだ。
『私の可愛いkid』と。
この一言で『あの子』が誰を指すのかがはっきりとした。
この中で、未だオレがその素性を把握できていない人物、月城さんを指すのだと。
だというのに、月城さんはオレ達のことを疑うことも、怪しむこともしない。
確かに、オレが奴らの会話を盗聴しているなどわかるワケがないのだが、だとしてもこの場にいる時点で何もしてこないというのはおかしくはないだろうか。
――それに、『私の可愛いkid』。直訳すれば、月城さんはベルモットの……子ども。
オレは携帯に何かメッセージを打つ月城さんを見やる。
仮に、本当にそのままの意味合いで、彼が奴の息子ならば、オレや灰原は組織の中でも危険な人物と交流を深めてしまっていたということになる。
そして、おそらく灰原もこのことを知っていて……。
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izawa(プロフ) - 東雲虚さん» ありがとうございます! (7月24日 21時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
東雲虚 - とても面白い作品でした 更新楽しみに待ってます! (7月10日 14時) (レス) @page41 id: 272de617c9 (このIDを非表示/違反報告)
izawa(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!修正しました! (2022年10月5日 19時) (レス) id: f153ef9291 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 51話、ブロンズヘアーじゃなくて、ブロンドヘアーです。 (2022年10月5日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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