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「大好物なのに、俺はずっと黙ってた。君と同じで大切なものを守るため、だった筈なんだけどね……」
作業の手を止めコナン君を見据える。
そして、俺にしてはらしくもない真剣な眼差しで彼に言った。
「君の大切なもの、守り抜いてね」
「――もちろん」
まだ小学生の少年が発したとは思えない力強い言葉に、俺は彼の本性を垣間見れた気がした。
＊＊＊・＊＊＊・＊＊＊
「あら、コナン君。いらっしゃい」
カランとドアが開いたと同時に声がした。
そこには買い出しから帰ってきた榎本さんの姿があった。
そしてその後ろにもうひとつの影。
「コナン君！ここに居たんだ！」
「あ、蘭姉ちゃん！」
コナン君が『蘭姉ちゃん』と呼んだ彼女は、紺色のブレザーに身を包んだ可憐な少女だった。
さっきお店の前でばったりね……と話す彼女は、世間体からすれば“可愛い”と言われるような面立ちで、コナン君が心做しか嬉しそうに声をあげていた。
彼女がコナン君の言っていた毛利蘭さんなのかと、その容姿を頭にインプットする。
俺はその彼女と入れ違えるように榎本さんの元へ向かった。
彼女が手に持っていた買い物袋を「おかえりなさい」という一言と共に受け取る。
「店番ありがとね、月城君。もしかしてまたコーヒー入れてた？」
チラッと厨房を見てか、榎本さんは俺に問う。
何も隠すことはない俺は素直にそれを肯定した。
「なら、蘭ちゃんもどうかな？月城君のコーヒー、飲んでいかない？」
「良いんですか？」
何を言い出すのだろうかと思えば。
せっかくだから、と榎本さんは俺の淹れるコーヒーを飲まないかと、彼女――毛利さんを誘ったのだ。
それも、ごく自然な形で。
生憎、社交性を持ち合わせていない俺は、こういった“誘う”と呼ばれる行為を今まで行ったことがなかった。
間接的であるがこれは“誘い”なのだろう。
勉強になるな……と、俺は唸った。
と、そこで視線が俺に集まっていることに気付く。
話の途中だったと俺は榎本さんの“誘い”を補助する形で言葉を付け加えた。
「あ、はい。まだ俺、ここでバイト始めたばっかりで、コーヒーもまだまだでして……」
「月城君の成長の為にも、どう？」
毛利さんは俺の顔を一目見て、にこりと微笑む。
榎本さんの誘いにのることにしたようだ。
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおっかな。コナン君はその――月城さん？とお話してたの？」
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