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side 緋山
「あー終わった」
手を洗いながら頭を左右に動かす。隣の白石は「男の子の方大丈夫だったかな」と呟いた。
「藤川に名取と桜井よ?それで治せなかったら誰も治せないわ」
「桜田先生ね。いつになったら覚えるわけ?」
あーそうだ。桜田だった。
「なーんか覚えらんないんだよねえ、なんでだろ?」
私の返答に白石がため息をついた。覚えらんないもんは覚えらんないわ。
続いて後処理をしていた橘先生もやってきた。疲れた様子でマスクをゴミ箱に捨てる。
「先ほど運ばれてきた少年、どうやら転んだわけではないみたいだ。突き飛ばされたようにしか見えないと報告が来た」
「え!?じゃあイジメ?」
橘先生が力なく頷いた。
「だろうな。本人はまだ意識が戻っていない。確証はできないが…
雄輔みたいに、毎日歩くので精一杯の子供もいるのにな。こういう事件が起きるたび、他人事のように感じなくなってしまった」
「橘先生…」
「…名取は置いておいて、桜井…桜田は心配ですね。もう見るからに感情移入しそうなタイプ」
「そうね、あとで話聞いてみる」
橘先生が白石にアイコンタクトを取った。え?何?
「そういやヘリの方も大丈夫そうだ。灰谷が大丈夫かはわからんが」
白石の顔に更に疲れが出始めたよ…「そっちもフォローしときます」という声はへにゃへにゃ。
「もー、何のためのシニアドクターよ。桜井と名取はこっちで様子見とくから。あんたは灰谷の慰め役でもしときな」
「ごめんね、ありがとう。灰谷先生と話し合って試しに乗せてみたはいいけど、完全に同乗者間違えたわ」
「藤川にでもしとけばよかったじゃん。なんで藍沢?」
「藍沢先生なら、仮に灰谷先生がパニックになっても落ち着いて患者さんに対処できると思ったから」
まぁ確かに嫌になるくらいあいつは落ち着いてるけどさ。
嫌になるくらい厳しいのを一番知ってるのは白石な癖に。
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作者名:吹田 | 作成日時:2018年7月10日 21時