T.M-23 ページ23
勝手に来ておいてなんだけど……なんだかんだ、やっぱり会えて嬉しかった。
文字じゃない。ちゃんと増田さんが喋ってる。
ホントは顔も見たいけど、まだ勇気が出なかった。
「お待たせー、子猫ちゃん！」
祐さんが席に戻ってきて、ヘルプについていたホストが去っていく。
麻知はまたあからさまに『嬉しい！』という表情で彼を迎えていた。
麻知も、ホントわかりやすいなぁ……。
まーた、私の事なんか見えなくなったかのように、祐さんしか見てないし。
「………」
「………」
麻知が私たちから意識を離した瞬間、少しの沈黙。
カラン……と音を立てたグラスに気づいた増田さんが「何か飲みますか？」と聞いてきた。
「え、えーと……じゃ、水を……」
「もう、お酒はいいの？」
「はい……ちょっと頭がボーッとしてるし」
どっちかというと、お酒のせいというより、増田さんのせいかもだけど。
「この後、慶と祐で挨拶終わりなんだけど……調子悪そうだからやめさせましょうか」
「えっ、でも……」
「何？まだ他のホストとも話したいの？」
少し怒ったような口調で言われ、驚いた私は口を噤む。
そういう意味じゃなくて、決まり事を壊していいのかな？と思っただけなのに……。
しゅんとする私の背中に、そっと優しく触れる手。
「……ごめん。言い方が悪かった」
その言葉に顔を上げると、増田さんが困ったように微笑んでいた。
……今日、初めてきちんと彼の顔を見る。
赤い髪は散らして遊ばせていたけれど、柔らかい視線は、いつもの増田さんで……。
私はやっと彼を真っ直ぐ見つめ返す事が出来た。
「私こそ、ごめんなさい」
何も言わず、カルテットまで来てしまって……。
その真意を汲み取ってくれたのか、増田さんは優しく首を横に振った。
それは『怒ってないよ』の意思表示。
やっとホッと出来た時「失礼します」の声と共に、次のホストが現れた。
あっ……もう、次の人？
そんなぁ……せっかく会えたのに。
でも、増田さんだって忙しいだろうし、初回ってそういうものみたいだし……。
残念だけど、諦めなきゃ……。
そう思い、増田さんを見送ろうとした時、急に彼がそのホストを手で制す。
「慶。悪いけど、彼女、フリーから俺指名に変更するって」
その言葉に驚いて増田さんを見ると、彼は私の背中に置いていた手でポンポンと合図した。
それに反応した私は咄嗟に「たっ、貴さん指名で！」と答える。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 275人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こもも(プロフ) - 7さん» ありがとうございます☆続編の方、今週中には更新出来ると思います！ (2018年7月25日 15時) (
レス) id: 997c86eca6 (このIDを非表示/違反報告)
7(プロフ) - 続きが見たすぎます。お願いします。 (2018年7月19日 9時) (レス) id: e2794de4c5 (このIDを非表示/違反報告)
こもも(プロフ) - めめさん» はじめまして！続きがあるのかなー？と待ってしまってました(笑)お褒めの言葉ありがとうございます。初めてのドリ小執筆でしたのでコメント励みになりました！頑張ります。 (2018年6月2日 21時) (レス) id: 53d2deb50e (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - はじめまして。先日は文字が切れて失礼しました。キャラ設定と丁寧な描写に惹き込まれております。更新心待ちにしております。 (2018年6月2日 1時) (レス) id: e60eb20bd1 (このIDを非表示/違反報告)
こもも(プロフ) - まあみさん» はじめまして！ありがとうございます。楽しんでもらえるように頑張りますね。 (2018年6月1日 20時) (レス) id: 53d2deb50e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こもも | 作成日時：2018年5月15日 15時
