T.M-3 ページ3
私の手にはローヒールのシンプルなパンプス。
壊れた派手な靴とは正反対の、とても上品なものだった。
「あ、の……？」
遠慮がちに男性に目をやると、彼は意味深にふふっと笑う。
「申し訳ないが、うちにはピンヒールを置いてなくてね。勝手に私が見立ててしまったが、あなたにとてもピッタリだと思うよ。なぁ？貴久」
ふいに呼ばれた名前に顔を上げれば、先程の彼と目が合った。
タカヒサ、と呼ばれた彼が、私とパンプスを見比べる。
そして「うん、とても似合うと思います」と優しく微笑んだ。
そのホストらしからぬ笑顔にドキッ……として俯けば、彼が私の手からパンプスを取り、スッと足元へ置いてくれる。
「試し履きしてみてください。オーナーの見立てだから、恐らくサイズは合ってると思います」
「で、でも」
「履いてみるだけ。ね？」
小首を傾げ、覗き込む表情は、まるで少年のよう。
服装ばかりに目が行っていたけれど、よく見ると、彼はとても童顔だった。
促されるまま「は、はい」と返事をし、ゆっくりとパンプスに足を入れる。
……すると、サイズを告げたわけでもないのに、私の足にピッタリとはまった。
「……あ」
思わず声を漏らすと、彼がクスリと笑う。
「まるで、シンデレラみたいですね」
その言葉に驚き、一気に頬が熱くなった。
そんな事、人生で一度も言われた事がなかったから。
うまく返す事も出来ず、もぞもぞとパンプスを脱ぎ、オーナーの男性に手渡す。
「あの、これ、買います！」
「ありがとうございます」
オーナーがすぐに履けるよう、一足用意してくれている間、私はバッグから財布を取り出した。
すると、その手をパッと止められる。
「待って。俺が弁償するって言ったでしょ？」
「いえ、大丈夫です。自分で買います」
「ダメだよ。俺のせいでヒール折れちゃったんだし」
「あの、ホントにいいんで……」
確かに原因には彼も関わっているけれど、かといって私にも落ち度がないわけじゃない。
それに……壊れたピンヒールは、ただの飾りみたいなものだった。
高いお金を払っても、決して満足出来る買い物じゃなかったんだから。
レジの前で押し問答を続けていると「はいはい、ストップ」と、オーナーが私たちを制する。
「……こうしたらどうだい？このパンプスは彼女が自分で購入する。そしてもう一足、貴久がお詫びに彼女へプレゼントする。これで解決だろう？」
思いもよらない提案に、私と彼は思わず顔を見合わせた。
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こもも(プロフ) - 7さん» ありがとうございます☆続編の方、今週中には更新出来ると思います！ (2018年7月25日 15時) (
レス) id: 997c86eca6 (このIDを非表示/違反報告)
7(プロフ) - 続きが見たすぎます。お願いします。 (2018年7月19日 9時) (レス) id: e2794de4c5 (このIDを非表示/違反報告)
こもも(プロフ) - めめさん» はじめまして！続きがあるのかなー？と待ってしまってました(笑)お褒めの言葉ありがとうございます。初めてのドリ小執筆でしたのでコメント励みになりました！頑張ります。 (2018年6月2日 21時) (レス) id: 53d2deb50e (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - はじめまして。先日は文字が切れて失礼しました。キャラ設定と丁寧な描写に惹き込まれております。更新心待ちにしております。 (2018年6月2日 1時) (レス) id: e60eb20bd1 (このIDを非表示/違反報告)
こもも(プロフ) - まあみさん» はじめまして！ありがとうございます。楽しんでもらえるように頑張りますね。 (2018年6月1日 20時) (レス) id: 53d2deb50e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こもも | 作成日時：2018年5月15日 15時
