いい加減にしろ！！５

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浅野｢で？｣


『ん？』



副社長室を出るなり、浅野は私に強い視線を向ける。



浅野｢動いたって何？何したの｣

『なんでちょっと怒ってんのよ、あんたのピンチ救ってあげたんだから少しは椎名さんに感謝してよ』

浅野｢感謝はもちろんしてるけど、何で相手側が辞めることになってんのさ｣



駐車場まで歩きながら移動している最中、浅野は私にずっと質問ばかり投げつけてくる。泣いて嬉しがってくれても良かったのにさ。



『あんたも大体は分かってるでしょ。つか、嫌がらせされてんだったら言えっつーの。気づかなかった私が恥ずかしいわ』

浅野｢それは…｣














一条ゆき、という名前を耳にしてからは話が早かった。彼女は新人ではあったが養成期間が他よりも長かったらしい。


言ってしまえば才能がなかったのだ。ただそんな人はこの業界にごまんといる、それでも努力を怠らなかった人間が仕事を掴むのだ。


彼女は努力を怠った側の人間だった。そんな彼女の目に入ったのが私だという。単純に言えば、憎かったらしい。


そこで私から蹴落とすのではなく外壁から、という考えでまず浅野をと思ったらしい。彼女のマネージャーもそれに加担したという訳だ。















『それで、私が相手側の事務所に行って本人ら呼び出して吐かせただけ』

浅野｢呼び出してって…そこまでしなくても｣

『じゃああのままで良かったの？』

浅野｢そういう訳じゃないけど｣

『ならいいじゃん、あんただってマネ業続けたかったんでしょ？私だって浅野に居なくなられたら困るわけ。』




win-winじゃん、というとあからさまに顔を歪ませる。




浅野｢あなたはタレントなんだから、万が一何かあったらどうしてたのよ｣

『何かって？』

浅野｢…それこそ、事務所を辞めさせられるとか｣

『あぁ、それなら素直に辞めて他の事務所にあんたと一緒に行けばいいじゃん』

浅野｢……は？｣

『は？って何、浅野ちゃんそんな間抜けな顔でしたっけ？』



ありえないとでも言いたげな顔で見つめてくるもんだから、少し困る。





浅野｢あんた……ツンデレ？｣





何を言うのかと思ったらこんなふざけたこと。数秒見つめ合ってから、私は視線を外し車に乗り込んだ。




浅野｢そんなに私の事気に入ってたんだ｣

『後輩くん、やっぱりこいつとマネ変わる？』

マネ｢えっ！？｣

浅野｢こらこら、私がいいんでしょ？｣

『早く車出して』

浅野｢素晴らしいツンデレだな｣




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