いい加減にしろ！！５

・ ページ28

_





【密着を開始して４ヶ月が経った今日、我々は初めて彼女が立ち止まった場面を目にした】





スタ｢椎名さん、どうしたんですか？｣

浅野｢演技が納得いかないらしいです。ああいう時はかなり長い間目を瞑って反省をしてます｣

スタ｢どのくらい？｣

浅野｢その後の仕事がない日は１時間くらいですかね｣





【椎名のマネージャーに聞くと、演技が上手く行かない時はあのような状態になるらしい。密着して見てきた中で、彼女があんなに弱々しい姿を見せたのは初だった】


【アニメ[アベリア]のアフレコ現場。彼女が演じているのは、聴覚障害を持つ主人公、宮下彩音の役。漫画連載当時から人気だったこの作品の主人公を演じるのはかなりのプレッシャーだ】(架空のアニメです)







『もうぜんっぜん分かんない。声を聞くのが困難な人からしてどんな世界が広がっているのとか、自分が出す声はどんなものなのかとか……うん……分からないなぁ…』

スタ｢さっきの演技では納得いかないですか？｣

『さっきのは酷かったと思いますよ、笑
確認で聞くのが怖いくらい酷かったと思う。あれで満足してたらもう私仕事もらえないです』







【もう仕事がもらえない。今をときめく人気声優が放った言葉とは思えないものだった。それでも彼女はそれが当たり前かのように我々にそう言った。はたして彼女が目指すものとは何なのだろうか】







『目指すもの……うーん、求められ続ける人ですかね。何年経っても、椎名Aに任せよう。あの人にやってもらおうって言って貰えるような存在。だって寂しいじゃないですか、忘れられちゃったら、笑』







【ドラマや舞台、映画にも出演している彼女が、なぜそこまでして声優という職業にこだわるのか。我々は彼女に聞いてみた】






―職業・声優にこだわる理由―










『こだわるというか、私にはそれしかないからですかね。というかそれだけであり続けるつもりです。ドラマとかも出させてもらってるけど、それはあくまで声優の仕事の延長線だと思ってて。声優以外の仕事は、[声優・椎名A]に来たオファーだと思ってます』







―それしかない、それだけであり続ける―









『名前からも分かる通り、二宮の妹って印象から始まるのが嫌なんですよ。あれです、負けず嫌いなんです、笑
だから別の舞台で輝き続けたいっていうある種のわがままなのかもしれませんね』









_

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す