31話 ページ32
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柄にもなく真面目な話をしてしまった。
語りに語ったあと、気分が冷めた私は早々に治療室から出て任務を時間よりも早く終わらせてしまおうと廊下を歩き出した。だが、すぐに人影に気づき足を止める。
『聞いてたの?』
五条「恵がお前に負けとは何かを聞いたあたりからね」
『ああ、それは残念。今すぐ忘れて』
彼と視線を絡ませることなく、忘れてと告げてまた歩き出そうとした。だけど彼の言葉でまた私は足を止める。
五条「本当に弱いのはお前だな」
『…………』
五条「アイツがああなったのは自分のせいだとか思ってんのか?アイツが離反してからどれだけ経ったと思ってんだよ。いい加減切り替えろ」
『うるさい。アイツにちょっと言われたからって口調や一人称まで変えたあんたにどうこう言われたくないよ』
五条「アイツがいなくなってからの高専時代、お前はそればっかだな」
アイツアイツって、彼の話ばかりだ。これでは埒が明かないと思い、『場所を移そう』と提案し誰もいない開けた場所に来た。
『別に私がどれだけ引きずっていようが五条には関係ないでしょ』
五条「関係あるよ。俺はお前の友達だから」
『友達、友達ね…』
正直アイツが離反してからの高専で過ごした思い出はあまり覚えていない。何年も経ったはずなのに思い出せる過去といったら4人で過ごした高専と去年のあの日である。
空白の日々は未だぼやけたままだった。
『去年、私が逃げたことであんたは更に強くいなきゃいけなかった』
五条「あ?急に反省会か?」
『戻ってきたことに後悔してるかと聞かれたらYesだ。出来れば五条と硝子にはもう二度と会いたくなかった』
五条「ああ、もしかして喧嘩売ってる?」
『嘘ついたところで怒るのはそっちでしょ。嫌な話聞かれたんだし、言うなら今かなって』
五条「はぁ。……いいよ、聞くだけ聞いてあげる」
私らは少し狭いベンチに腰をかけた。
何年も語られなかった彼らの本音が、少しだけ零れる時間。
『死ぬほど好きだったんだよね。傑のこと』
久しぶりに口に出した彼の名前は私たちの空気を少しだけ冷たくさせた。
『だからこそ、傑に手をかけるのは私であるべきだった』
でも結果的に手をかけたのは五条だった。私はただそれを少し離れたところで見ているだけで。今でも、その光景は鮮明に覚えている。
五条は私の話を静かに聞いていた。
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ひながき(プロフ) - しおりさん» 𝑶𝑴𝑮(゜д゜)、教えていただいてありがとうございます!! (2022年2月7日 1時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 悠仁の漢字間違ってます! (2022年2月6日 23時) (レス) @page23 id: 2479e15f01 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - プスメラウィッチさん» 五条オチです!!今後もお楽しみください!! (2022年2月6日 2時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - 15さん» ありがとうございます!!ゆっくりですが、しっかり更新していきます!! (2022年2月6日 2時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - ひながきさん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張ってください。応援しています(*^^*)楽しみにしています。 (2022年2月5日 21時) (レス) @page25 id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひながき | 作成日時:2022年1月9日 22時