2．聞き間違い ページ3
ボトッ。
外靴が重力に従って床に落ちた。
「染谷くん…なんで…」
「僕もこれから帰る所だったんだよ」
「そ、そうなんだ？」
釈然としないまま相槌を打つ。と、彼が近くまで来てじっと見つめてくる。
「…ねえ。話があるからこっち来て」
「えっ！？」
ぐい、と強く腕を掴まれ、
遠くから、運動部の掛け声が聞こえる。
(えっと…？この状態は壁ドン未遂…？)
そう。なぜか壁に追いやられているのだ。
後は染谷くんが壁に手をつけば…ってそうじゃなくて。
「あの＿」
「何で嘘ついたの」
「は、はい…？」
別のことを考えていたら染谷くんが口を開く。
よく聞いていなかったので曖昧な返事をすると、彼は更に不機嫌になって、
「…だから、何で“好きな人ができたから別れたい”って嘘ついたの？」
ちゃんと話を聞いていなかった私でも１回で理解できるように、言い直してくれた。
(えっと…？「何で“好きな人ができたから別れたい”って嘘ついたの？」…やば。なんて誤魔化そう)
だんだんと夏に近づくこの時期に反して、背中に冷や汗をかく。
「それは…聞き間違いとかでは…」
「確か君、背が高くてピアスしててジャラジャラのネックレス着けてる人を好きになったんだよね？」
「…言いましたね、そんな感じのこと」
(もう無理だ。誤魔化すのは)
まさかそこまで覚えていたとは。彼の記憶力をなめてはいけない(というか、その特徴ってヤンキーか何かの類ですか過去の私)。
私は降参のポーズ(両手を上げるやつ)をとった。
そんな私を見た染谷くんの眉間に、皺がなくなる。
「それで？僕と別れたいって言った本当の理由は？」
「………」
「……理由も言えないの？」
言えない。言えるわけがない。
『＿＿』
今でも脳裏に焼き付いている景色。鮮やかだった世界が、ある人に言われた一言で真っ黒に染まった、あの日のことなんて。
鼻の奥がツンとした時、上げていた両手を何かによって壁に縫い付けられた。
＿染谷くんの手だった。
「…僕の、どこが悪かった…？」
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ほたる(プロフ) - 奈津さん» ありがとうございます！出来上がり次第、更新します！ (9月20日 6時) (
レス) id: 858ad6cafb (このIDを非表示/違反報告)
奈津(プロフ) - めちゃくちゃ好きです、更新楽しみに待ってます！！ (9月19日 22時) (レス) @page4 id: 1b362c8584 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほたる | 作成日時：2023年8月22日 17時
