アンジュ・エ・デモン

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今夜のメニューはカツ丼。

お惣菜のセールに運良く出くわしたから、瞬時に思いついた。





重岡くんの家で玉ねぎを出汁で煮込みながら何気なくキッチンを見渡すと、はじめは鍋１つと包丁まな板しかなったのに、ある程度の道具が揃ってる。



食器も、私が一緒に食べてるから２つずつ。







面倒な時は何度もあったけど、あと3日でこの生活も終わりかって思うと寂しくなってしまった。

外でみんなでご飯を食べる事はあるかもしれないけど、この部屋で2人でって機会は多分無いんだろうな。







重岡くんに視線を移すと、ヘッドフォンをしながら真剣にピアノを練習してる。


桐山さんの二次会もあと2週間だし、追い込み中なのかな。





相変わらず音は聞こえないから、当日何を弾くのかさっぱり分からないけど。







「重岡くん、ご飯出来たよ」



「お、今片付けるわ。よっしゃーカツ丼やんけ美味そう！」








カツ丼にテンション上げて、中学生みたい。




ピアノと楽譜を部屋の隅に片付けて食べ始めた。







「あのさ、言いにくいんだけど、お弁当作るのが難しくなる事態になりまして」



「なんや、めんどくなったんか？」



「そうじゃなくて。

作るのは良いんだけど……見られちゃったみたい。重岡くんが、朝お弁当取りに家に来てくれてるの」







昼に百合と話した事を伝えると、重岡くんも驚いた顔。

どうやらこちらも、上手く忍べてたと思ってたらしい。







「マジか…ごめんな、誤解させて」



「ううん、良いんだけど…渡すの難しいし、どうしたら良いかなって思って」



「ええよ、弁当作りは。まさか高橋にそんな迷惑掛かってるなんて思わへんかった。悪かったな」



「うん…ごめんね。あとちょっとだったのに」



「えーよえーよ。俺は男やから何言われても良いけどさ。

高橋は女の子やから。何か言われても、ちゃんと否定するんやで」



「…うん、ありがとう」







朝が楽になるから嬉しいはずなのに






寂しくなるのは何故なんだろう。






最近の私は、なんかちょっとおかしい。

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