アンジュ・エ・デモン

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仕事を終えて、夕飯の材料を買いに近所のスーパーへ寄った。




決して料理は得意じゃないけど、何でも美味しそうに食べてくれる重岡くんを見てると作り甲斐がある。






明日はうちの部署は飲み会だから、カレーでも作ろうかな。

それなら明日も食べてもらえるし。





重岡くん、カレールウはどのメーカーが好きなんだろう…？







カレールウ売り場で、色んなメーカーの物を眺めながら考える。







「カフェモカのお姉さん」







近くで聞き覚えのある声がしたけど、そんなことより今はカレールウ選びに夢中。


特に気にも止めなかったけど、今度は肩を軽く叩かれた。







「カフェモカのお姉さん、ですよね？」



「え……








っっっ！！！！」








なんということ








私の目の前に、私服姿の藤井さんがいる。






しかも、ニッコリ笑いかけてくれてる。






私に向けてるの？その笑顔。

キョロキョロ周りを見渡したけど、この場にいるのは私だけ。







「ふっ…」







藤井さん、と言いかけて思わず止まる。



ただの客のくせに、名前知ってるとかキモい？



そりゃ名札付けてるから知ってるんだけど、そんなとこガン見してるなんてヤバい？








「すいません、いきなり声掛けて。いつもカフェモカ飲まれてるお姉さんですよね？

俺、あの店で働いてる藤井っていいます」



「た、高橋です…っ。よく分かりましたね…？こんな所で…」



「はい。カフェモカ頼む人少ないし、お姉さん毎日のように来てくれてるから覚えちゃいました。


すいません、馴れ馴れしくて。一応職業柄、人の顔とか勝手に覚えちゃうんです」







いつも白いシャツにギャルソンエプロンしてる姿しか見てないから、私服姿が凄く新鮮。


予想以上のおしゃれさんで、こんなに完璧な人いるんだって…








「カレーですか？今晩」







違いますっ！ローストビーフです！
ニョッキとか作ります！






なんて言いたかったけど、






カレールウ真剣に眺めてる所だったから、そんな事言えない。








「いいなぁ、カレー美味しそう。ちゃんと自炊するんですね」




「え、えぇ、まぁ…。藤井さんもするんですか？」



「いや、俺は全然。飲み物とおつまみ買いに来ただけです」







藤井さんとこんな世間話ができるなんて夢みたい。






フワフワした足取りで家に帰った。

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