Blue Lagoon

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本格的な海開きは７月の半ばだけど、気の早い人はそろそろ海に集まりだすらしい。




明日からの仕事始めに備えて、住む部屋の掃除や片付けをして、自分好みに家具の配置を変えて、買い物に出掛けた。




東京から電車で一時間のこの海は江ノ島とかメジャーな海水浴場じゃない。

近場にコンビニは二軒しかないし、スーパーも小さなのが一軒。

都会暮らしに慣れてるから不便だなって思うけど、昔住んでた海の街も似たようなものだっけ。





スーパーで数日分の飲み物や食べ物を買い込んで、アパートへと歩いた。




見上げると星が綺麗で、海のにおいと、涼しい海風。
波の音に包まれながら、やっぱり昨日までの喧騒とのギャップを感じてしまう。





だけど、部屋に戻って、窓を開けると月に照らされた海がキラキラ優しく光ってるのを見ると心が浄化された。




私、疲れてたんだ。




いろんな事に。




我慢することに慣れすぎて泣くことも最近は無かったのに。





「………ふぇっ…っ」





誰に聞かれるでも見られるわけでもないから、小さく声を出して泣いてみた。





大人になってから、こんな風に泣いたのは初めて。

もちろん子供の頃みたいに大声は上げれないけど…
それでも、ちょっとスッキリ出来るような気がした。





「おねーさん、大丈夫ー？」





…





…





えっ！？





誰っ！？





キョロキョロ辺りを見回して、でも狭い1DKのこの部屋には私以外誰もいない。





おそるおそる押し入れやバスルームを開けてみたけど、やっぱり誰もいない。





…やばいな、私。

ストレス感じすぎて、聞こえちゃダメなやつ聞こえるようになった？





霊感出てくるとか最悪…。





だけど、そのせいか涙は引っ込んだ。





さっきのは幻聴かな？
あれ以降何も聞こえてこないし。





気を取り直して洗濯竿に持ってきたハンガーを掛けようとベランダに出た時、隣の部屋のベランダに男の人がいて、ビールを片手にしてた。





「ひっ！！！」





お隣、いたの！？！？表札無かったじゃん！！！





ってことは、さっきの声の主は…






「どーも。泣き止んだ？」




「…」





無言で頷くと、彼は「そっか」と言って軽く微笑んだ。






人間は、驚きすぎると声が出なくなるらしい。

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