アマレット (ページ9)

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７年前の夏ページ9

クラスには色んな男の子がいたけど、北山くんは一番目立ってた。

小柄で、可愛らしい顔立ちで、ムードメーカーで、みんなと仲が良くて。

でも意外と成績良いし、大学の推薦もらってるし、文化祭の実行委員してるし。

そして、絵里とすごーく仲が良かった。
はじめは付き合ってるのかと思ってたけど、絵里には大学生の彼氏がいたし、北山くんには他のクラスに彼女がいた。

「ヒロくーん、帰ろ！」

甘ったるい砂糖菓子みたいな子。
でも、時々こっちを見る目が鋭い。

「絵里に嫉妬してんだろ。ミツと仲良いし、〝ミツ〟って呼んでる女はあいつだけだし」

会話の流れで北山くんの彼女の話になった時、誰かが言ってた。
だから、時々視線を感じるんだ。

ま、私じゃなくて横にいる絵里にだけど。

北山くんは高２まで女の子をとっかえひっかえだったけど、今の子とは春からずっと続いてるって。
だから、今回は真面目に付き合ってるんだってみんなが言ってた。

この頃には散々友達いらない、地味に過ごすって思ってたのに、東京の生活にスッカリ馴染んでた。

毎日勉強に遊びに忙しくて、目が回るくらい楽しくて。
山梨の彼から連絡が来ても、おざなりになる事もしばしば。

だからさ、私に文句言ったりする資格無いんだよ。

クリスマスに東京へ来てくれた彼から、

『他に好きな子が出来た』

って言われても。

続ける事に努力をしなかった私が悪いんだから。

だけど、やっぱりちょっと、落ち込んだ。

年が明けて新学期。
さすがにクラス内は大学受験一色の雰囲気。
早々と推薦や就職で進路が決まった数人も、何となく気を遣ってくれてるのが分かる。

「いいよ、俺やっとくから。お前塾講だろ？」

二学期の終わり頃から、この言葉をよく聞くようになった。

担任が理科教師で、理科準備室の整理をクラスの生徒に持ち回りで週２回お願いしていた。

大した量じゃないから普通にすれば一時間以内で終わる事だけど、わざわざこの受験を控えた時期にお願いするなんて無神経だな…なんて思ってた。

でも、ある時偶然理科準備室の前を通りすぎた時、当番じゃない北山くんが一人で資料を何やら片付けてるのを見た。

その次の当番の日、確認を込めて理科準備室を覗くと、北山くんが一人でフラスコや試験管を整理してた。

その謎は、自分の当番の日に判明した。