７年前の夏 ページ8
その日は突然訪れた。
一学期の終業式の日の夜、両親にリビングに呼ばれた。
「成績悪くなかったと思うけど…」
「成績の話じゃなくてね。
実は、お父さんが９月からニューヨーク勤務になったの」
「…はぁ」
「お母さんも一緒に行こうと思ってて」
「そ…うなんだ…
じゃあ、私独り暮らし？このまま」
「バカ言わないで。こんな田舎に一人残せるわけ無いでしょう。夜に駅から一人で帰るのも許してないのに。
だから、Aも一緒にニューヨークに行くか、東京の親戚のところに居候するか。
どっちにする？」
私にはニューヨーク行きか、東京の高校に転校し選択肢は無かった。
「え…A引っ越すの？」
「うん…。９月から、東京の高校に転校する」
「そっか…。俺、大学は絶対東京行くから。
そしたら、また会えるもんな！
大丈夫、半年やそこらの遠距離くらい。
お互い、信じてれば大丈夫だから」
高２から付き合ってた彼の言葉を真に受けて、私は一人で東京へ行った。
親戚はお母さんの妹夫婦。１つ年上の従兄弟の渉がいる。
お姉ちゃんもいるけど、結婚して家を出たからちょうどその部屋に私が滑り込む形になった。
その時の私は当然のようにやさぐれてて、新しい友達もいらない。
地味に目立たないように過ごして、彼とどの大学に行くか相談して、勉強だけは頑張ろうって思ってた。
でも…
「Aだよね？絵里だよ、覚えてる？中学同じだった！」
「あー！覚えてる！」
同じクラスには、中学卒業と同時に東京へ引っ越した絵里がいた。
すごく仲が良かったわけじゃないけど、友達の友達ってとこ。
絵里はすっかり東京のいかにもな女子高生に変身してて、田舎出身なんて感じさせなくて。
「A、原宿行こ♪」
「A、渋谷行こ♪」
そんな風に連れ回されてく内に絵里の友達グループとも仲良くなったし、多分垢抜けていったんだと思う。
「Aさぁ、髪の毛巻いたら可愛いんじゃね？」
絵里の隣の席の北山くん。
いきなり下の名前呼び捨てにしてきてビックリした。
東京の男の子って、そうなんだ
しかも、髪の毛巻けとか言ってくるんだ。
でもさ、見た目通り北山くんってチャラいし軽いよ。
学校帰りにコテ買って、雑誌見ながら必死で髪の毛巻いたのに。
完全にスルーとかさ、どーゆう神経してるの？
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作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
