アマレット (ページ42)

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フレンチって言っても、渉の働いてるお店は畏まってなくて、フラッ立ち寄りやすい。
実際に私も初めて来た日は緊張したけど、それ以降は全然。

「北山くんまだ飲む？」

「んー…ちょっと。Aのオススメ食べたいから、メニュー任せるわ」

「ん、わかった。どれでも美味しいけどー…」

白ワインと、大好きなカルパッチョサラダと、渉が賄いみたいに作ってくれるパスタが私のお気に入りコース。

それに、北山くんはどうしても食べたいって言うからフレンチフライを頼んだ。

「んっ！美味っ」

「でしょ？美味しいでしょ？」

フレンチフライを頬張ってる姿…可愛いな。昔、お弁当のコロッケ食べてる影像を思い出してニヤニヤしちゃう。

「何笑ってんの？」

「…いや。北山くんは、美味しいものはよく口いっぱい頬張ってたなーって思って。

ね、ここ何が入ってるの？」

少し膨れてる頬を、思わず指で触れてしまった。
カップルシート特有の近さと、既に入ってるアルコールのせいか、少し大胆になってるのかも。

「ポテトだわ！
…つーか、リスじゃねーし。癖なの、美味いといっぱい食べるの」

「…変わらないんだね、そーゆうのも」

「変わんないでしょ。基本、高校生の頃って色々出来上がってるし。

…だからさ…変わらないんだけど、こっちも」

「こっち？」

北山くんが指差す方を見ると、自分の胸を指してる。
それって…

「真人くん、って彼氏のこと？」

「うん…そう」

「そっか…。なぁ、俺、頑張っても良い？」

「頑張る…？」

仕事の時とは何か違う。真剣な、熱のこもった目。
そのまま目が反らせなくて、

「うん…俺、あの日…

「お待たせしましたーカルボナーラです」

微妙な空気を打ち消すみたいに、パスタを持ってきた渉。
咄嗟に目をそらして、テーブルにお皿を置く場所を作る。

「あ、ありがとっ」

「はーい。な、お前友達連れてくるなら真人くんも１度くらい連れて来いよ。
俺が彼氏だったら、男友達以下かってへこむけど」

「えっ！？いや、そんなんじゃなくて…今日はたまたま近くで接待が、ね」

「ま、俺はいいけどさ。彼氏へのフォローもしておけよ。

じゃあ、ごゆっくり」

何か興味津々みたいな意地悪な笑顔と爆弾を投下して、渉は仕事に戻って行った。