７年前の春 北山・side ページ5
Aの涙を見て以来、目で追いかけるようになった。
絵里は鋭いから、そういう俺の変化にも敏感に気づいてるかも。
「ンだよ」
「別にー。ミツさ、浮気はダメだよ？」
意味深な言葉。やっぱ、コイツ気づいてんだな。
「意味わかんね」
相変わらず放課後の理科準備室整理は俺が引き受けてて、時々Aがやってくる。
それが目当てで引き受けてる感じになってきた。
でもある日…
「ヒロくん♪」
「玲美ちゃん…どしたの？」
「ヒロくんがよく放課後ここにいるって聞き付けたから、来ちゃった」
「ふーん…」
玲美ちゃんは私立の大学受験を終えて、第一希望の女子大に合格してた。
だから、俺がここに来る日はいつも来るようになった。
当然、Aは来なくなって。
空気読んじゃった感じ？ここで一緒に何度か過ごして、距離が縮まった気がして嬉しかったのに。
「A、何か言われた？玲美ちゃんから」
「ううん、別に。前に手伝おうと思って寄ってみたら、彼女がいたから入れなくて。
良かったね、彼女が手伝ってくれて嬉しいでしょ」
「…」
ニコって軽く微笑んだ表情は少し寂しそうに見えたけど、それは俺の都合の良い解釈だったのかな。
「ヒロくん、ここでシちゃう？」
「いや…ダメでしょ、普通に。担任来るときあるからな」
「じゃあ、この後うちに来る？親いないの、今夜」
「…わり。今日、俺お腹痛いから」
「…ヒロくんてさ…」
あ、やば。これ、ケンカするフラグだ。
めんどくさい。玲美ちゃん、可愛いから許すけど拗ねるとめんどくさいんだよな。
「黙ってて」
だから、そのまま抱き上げて机に座らせて、唇を重ねた。
さすがにそこで続きなんか出来ないし、いちゃいちゃすることで玲美ちゃんは満足して解放してもらえた。
「んー？だからさ、ミツはもう玲美に気持ち無いんだって。
何度言えばわかるかなー」
また、二階堂の家に寄り道。
やっぱりそうなのかな…そうだとしたら、どうして？
「朝比奈さん、だろ。どう考えても」
「…やっぱそう思うか？」
「100人全員そー思うわ。
ほら、認めちゃえ。俺は、朝比奈Aが好きでーす！って。窓から叫べ」
コイツ完全に面白がってる。
いや、面白いな。逆の立場だったら、俺だって面白いわ。
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作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
