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打ち合わせの金曜日になった。
百貨店のバックヤードに本屋の制服で行くわけにもいかず、いつもより綺麗目な私服を選んでみた。
裏口の警備員さんに今日の打ち合わせの件を告げて、しばらく待ってると駆け寄ってきた北山くん。
「お待たせしました、朝比奈さん。行きましょう」
「はい。本日は、よろしくお願いします」
警備員さんに軽く会釈した北山くんは、そのままエレベーターへ案内してくれた。
外では、どこまでも他人行儀。
なのにさ…
「可愛いね、私服で来たんだ」
「へっ！？」
「制服のAしか知らなかったし、新鮮」
「…さすがに、あんな服で来れないよ…飯田店長から一張羅で行けって言われてたし」
エレベーターに乗った瞬間、さっきまでのピシっとした雰囲気が消える。
もう、このギャップやだ…無駄に緊張してくる。
「ラウンジが出来るのは、このフロアなんだよね」
そこは貴金属とか、ギフト用の品物や着物とかがあるフロア。いかにもお金持ちな感じの客層。
「で、ここは少し前まで外資のカフェが入ってたんだけど、契約更新せずに、今回のラウンジが入ることになった。
前の店は結構流行ってたから、今回も多分賑わうと思うよ。どうぞ」
「どうも…」
まだオープン前だから白い壁に覆われてて、そこについてる簡易扉を開けると、店内の改装はほぼ終わってる感じ。
「南国の隠れ家カフェのイメージ。日本人って南国リゾート好きだろ？」
「うん！すごーい、可愛いね！椅子もゆったりしててフワフワ〜」
「んふふ、いいよ、座って。感想聞かせてよ」
一人掛けのソファーなのに幅広で、クッションもフカフカで体を預けると寝ちゃえそうなくらい気持ちいい。
思わず目を閉じる。
「んー…おやすみなさいって感じー…」
「おそうよ？」
「…え？」
「無防備厳禁。ほら、立って！時間ねーぞ」
「あ、うん…ごめん…」
さらりと言われた単語に、思わず一瞬固まる。
いや、冗談だよね。チャラい人特有の軽口。
「お茶とか持ってくるわ、ちょっと待ってて」
「うん、ありがと…」
マグカップとかお皿も南国リゾートを意識してるデザイン。
いいな…旅行行きたいって思わせる。
「ハワイ行きたいなーとか、思う？この店とか見て」
「思う！ていうか、今思ってた」
「このまま旅行会社に足向けてもらえると、最高なんだけどな」
１つの仕事から、その先に繋がることも考えてるんだね。
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作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
