アマレット (ページ34)

今日:13 hit、昨日:2 hit、合計:553,975 hit

自覚北山・side ページ34

「ダメだから。悪いけど」

「まだ何も言ってねーだろ。結婚してるのか聞いてるだけだし」

「Aは、ダメだから。…ミツ、今更手出したりしないでよね。

やっと幸せそうになったんだから」

「は？どーいう意味？山田とは、もう終わってる？」

俺の事見透かすみたいにじっと見てきて、ため息をついて、コーヒーを飲もうとしたからそれを取り上げる。

「ダメ。言わなきゃあげねーから」

「ちょっ…
何年前の話よ、山田くんはさすがに、終わってる。

ていうかさ、山田くんと付き合う時もAは結構ヤケクソみたいになってたからね」

「ヤケクソ…？」

「卒業式の日、帰り二人になったんでしょ？
どうして何も言わなかったの？」

「…言いたかったけど、山田が来たし…」

「二人になってすぐ来たワケじゃないんでしょ？

…好きだったくせに、あの時。玲美ちゃんなんか好きじゃなかったくせに。
意気地無しの上に、ズルイって思ったんだから」

グサグサ古傷抉られる感じ。
昔から、絵里は歯に衣着せないからなぁ…

「別に、玲美は玲美で好きだった。実際、それなりには続いてたし。

俺の中ではあいつが最長だよ？」

「…何度か同時進行しつつ、だけどね。
一途にあの子だけじゃなかったじゃん」

「…分かんなかったんだよ。あの時、Aが好きってこと。

山田に持ってかれてから気付いて…でも、そんな事もう言えなかったし」

あの時、何でAのこと引き渡しちゃったんだろうって後悔した。
だけど、断られるのが怖くて何も出来なかった当時の俺は、絵里の言うとおり意気地無しだ。

玲美も繋ぎ止めておくっていうズルもしてたし。

「Aは何も言わなかったけど、あの子だってミツのこと好きだったって私は思ってる。

…でも、ミツはわざわざ呼び出したくせに山田くんが来たら帰っちゃうし、そのまま何も言ってこないし。

それなら一生懸命好きだって言ってくれた山田くんを選びたくなるじゃん」

「…そっか…両思いだったかも、なんだ…俺ら。

ごめん。はい、どーぞ」

取り上げてた絵里のコーヒーを渡すと、今度は呆れたみたいなため息。

「…さっきの質問だけどさ。
A、結婚はしてないよ」

「…そっか」

「何で今更そんなこと聞くの？」

「…再会したんだよね。仕事でだけど。
そしたら、なんか…」

気持ちが蘇ってきちゃったんだよな。