自覚 北山・side ページ32
諦めろ、と言われて、意気消沈しながら再びタバコに火をつける。
そんな俺を、二階堂は微妙な感じで見てくる。
「てかさ、俺が知ってる子なんだよね？」
「…知ってる」
「朝比奈A？その相手」
「…何で？」
「いや、共通の知り合いだから、俺の事呼んだんだろ。
俺の中でミツがそんな風に思いそうなのって、あの子しかいないから」
黙っちゃった俺に、二階堂は呆れたみたいなため息。
「絵里ちゃんだっけ。聞いてみたらいいのに。あの人なら知ってるでしょ」
「無理無理無理。そんな恥ずいこと聞けるかっての。
だいたい、別に昔好きだっただけで今は取引先の女の子ってだけだし」
「え、取引先で再会したの？運命的！いいじゃん」
「…な、」
再会できるように頑張って企画したなんて言えない。
まさか、正直あの案が通ると思わなかったし…
通らなかったら、俺はどうしたんだろう。
普通に、店に通って会いに行ってたのかな。
「とりあえずさ、朝比奈さんに彼氏がいるか、結婚はしてないかは聞かないと。
それからだろ？どうこうするのは」
「…別に、好きなんて言ってないだろ。好きだった、としか」
「いや、好きでしょ。じゃなかったら今日だって俺なんか誘わずに一人でクラブ行って、誰かお持ち帰りしてるでしょ」
「…じゃあさ、あいつが既婚だったら、どうしたらいい？」
「既婚なら…ダメだよ。諦めないと。略奪とかは良くない」
「じゃあ、彼氏がいるなら？」
「そんなのは、奪えばいい」
「んふ、過激だな、お前」
「何言ってんの、背中押して欲しくて呼んだくせに。
諦めろ、邪魔すんな、なんて言葉求めてないでしょ」
「…よくお分かりで。俺のこと」
「まぁ、付き合い長いから。20年くらいだもんな」
ニパって元気な笑顔見せられて、何かちょっと元気でるわ。
それと同時に自覚する。
俺は、誰かにAのこと好きなら今度こそ伝えろって背中押して欲しかったんだって。
心の中は、あの卒業式の日から時計が止まってたんだって。
俺も二階堂も、今は実家を出て一人暮らしをしてる。
だから、店の前で別れて一人で家路を歩く。
その途中、意を決してスマホを取り出した。
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作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
