自覚 北山・side ページ31
最近のモヤモヤを発散したくて、二階堂をクラブに無理矢理連れていって、女の子と遊ぶ。
前なら、このまま誰か見つけてホテル行くのが定番コースだった。
でも今日はそんな気になれなくて、片隅でビール飲みながら、派手に踊る女の子たちをボンヤリ眺める。
「ミツ、どうした？俺の事ゴリ押しで連れてきたくせに、そんなにシケた顔して」
「…ダメだ。ごめん、俺やっぱ今日は帰るわ」
「はぁ？ちょっと、ミツ！」
クラブを出て、すぐ近くにあるカフェに入る。
「底なしで酒飲みのミツがコーヒーだし、女の子漁りが趣味なのに全然しないし、一体どうしちゃったわけ？」
「…別に、何でもねーよ」
「いやいやいや。何かあるでしょ。
あのさ、俺いきなり呼び出されて来たんだけど？
なのに、この扱いはないだろ」
「…だな。わりぃ」
タバコに火を付けて、鳴らないスマホを見つめる。
「何？せっかくだから聞いてあげるけど」
「…お前に女の話してもなー…」
こんな風に言っても、二階堂のがよっぽど俺なんかよりまともに恋愛してきてる。
だから、本当は相談したくて呼んだんだけど。
「…会ったんだよね…」
「誰に？」
「…昔、好きだった女」
「ほぉ」
「…何か…ダメだわ」
「何で？もう結婚してたとか？」
「結婚…か」
そういえば、考えても無かった。
Aがもしかしたら、既婚者の可能性。
25才なら、別にありえなくは無いし。
一生懸命記憶を辿って、…多分、指輪はしてなかったと思うけど…
仕事中は外してる可能性も捨てきれない。
「多分結婚はしてないと思うけど。
あ、でも彼氏はいるかもな」
「聞けばいいじゃん」
「…な。そーなんだけどさぁ」
「つか、呼べ！今、ここに。そんで、聞けばいいじゃん！」
呼べるものなら呼びたいわ。
でも、呼ぶ手段が無いんだよ。
今の俺とあいつは、仕事上での付き合いしかないから。
「知らねーもん。アイツの連絡先」
「…聞いてないの？」
「聞いたけど、なんか流された。
名刺渡して、絶対電話するねって言われてから１週間くらい経つかも」
「無理だわ。諦めろ、その女」
やっぱ、そうなのか？
自分でも薄々思ってはいたけど…
もしかして、俺ら同じ気持ちだったりしないの？って淡い期待はただの願望なのかな。
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作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
