29 ページ29
「ねぇ、聞いてる？」
「えっ！？…あ、ごめん…何だっけ」
仕事が終わった後、そのまま真人くんのお家へ遊びに行った。
サービス業の私たちは土日にお互いお休みなんてありえなくて、いつも平日休みの前の夜から会うことが多い。
「…GWの後、連休取れるだろ？そろそろ、Aのご両親に挨拶とかしたいんだけど」
「え…」
「それが終わったら、俺の方にも来てくれる？」
「…」
「…意味、分かる？」
さすがに、ここまできたら分かる。どうしよう。今までみたいな匂わせじゃなくて…
「A、結婚してください」
ハッキリしない私の態度にため息をついて、真人くんはポケットから小さな箱を出した。
おそるおそる手を伸ばして箱を開けると、キラキラした小さな石が付いたリングが光ってる。
「かわい…」
「…A？」
「え？」
「え？じゃなくてさ…返事、聞かせてよ」
そうか…私、今プロポーズされたんだ。
真人くんとは、付き合ってちょうど２年だ。
友達の彼氏の友達で、紹介されて４人で遊んだのが私たちの出会い。
高校卒業してからしばらく山田くんと付き合って、でも上手くいかなくて別れて。
その後また出来た彼氏とは、二股をかけられて別れた。
その次も、また二股されてて。
私、いつも二股の下の方にされちゃうんだよなーってやさぐれてた時、真人くんが現れて。
２年経ってもずっと優しくて、好きだってことも言葉にしてくれる。
私、このままこの人と一緒になるのかなって思ってた。
つい、数週間前までは。
もしも、このプロポーズがあと１ヶ月早かったら、私は喜んで飛び付いてたかもしれない。
今は、真人くんと一生を共にする覚悟が出きるかを問われるならば…
「…ねぇ、最近何かあった？」
「何かって…？」
「いや、何となく…連絡とかもちょっと減った気がするし、前は少しでも時間あれば会いに来てくれてたじゃん。
だけど、最近は…」
「今ね、仕事が忙しいの！近くにある松越デパートのゴールドカード会員向けのラウンジ製作に携わってて…通常業務にプラスそれだから、疲れちゃって」
「へぇ…そんなことしてるんだ」
「話来てから、１ヶ月半後にはオープンなんだよ？急過ぎるでしょ」
「うん…でも、本屋が何で？関係無くない？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1021人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
