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「北山さん？」
「え、はい？」
「どうかされましたか？」
「いや、え、どうして…」
「…笑ってるような気がしたので…私、趣旨に合わない本を選んでしまってるのかと…」
もしかして、センス無し！！って呆れて笑ってたりするの？
だんだん不安になってきて、尋ねてしまった。
そしたら、いきなり優しく笑いかけられた。
「本屋デートしてるみたいじゃね？俺ら」
その言葉に、思わず固まる。
本棚に伸ばした手が止まった。
「A、久しぶり。元気だったか？」
「な、んで…？」
「何が？」
「…他人のフリでいくのかと思った…」
「んふふ、やりにくいじゃん。あの打ち合わせの時、俺ら同高だったんですーなんて。」
「忘れちゃったかと思ったよ…私のこと」
「…忘れるわけないだろ」
さっきまでの仕事って空気が抜けて、昔に戻ったみたいになる。
嬉しくて、安心して、何だか泣きそうになる。
「ごめんな、A」
「…何が？」
「…いや、色々…」
でも、そこで店長が戻ってきちゃって、この微妙な感じは吹き飛んでしまった。
その後は何となくさっきの感じには戻れなくて、そのまま仕事を再開させる。
「…よし、こんな今日の本選びは所かな。
なぁ、この店の売り場って誰が作ってんの？」
「本部から指示がくるから、それ見ながらみんなでだよ」
「…じゃなくて、自由に作れる売り場あるだろ？」
「あー…ジャンルによって違うけど、入り口のシーズン売り場は私が作ってる」
「シーズン？」
「季節モノみたいなの。
お花見関係とか、夏休み特集とか、その時期に関連してる本をいろんなジャンルから寄せ集めて」
「へー…。俺さ、この企画作る時、上からの指定が無ければ、絶対この店舗と組むって決めてたんだよな」
「近いもんね。色々楽だもん、打ち合わせとかも」
そこまで言ったら、今まで饒舌だったのに、急に黙っちゃって。
そんな沈黙されても、こっちも困るんですけど…
「まぁ、近いと楽だけどさ…
ここの店員さんの中に、センス良い人が絶対いるって思ったからさ。
まさか、それが朝比奈さんとは思わなかったけど」
「まーたー。チャラいのは変わってないなぁ〜。
うん、でもありがと。嬉しい！結構、毎回売り場作るのは頑張ってるよ」
「…チャラくねーし…。あ、そーだ。コレ俺の名刺。Aにも渡しておくな」
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作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
