アマレット (ページ3)

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７年前の冬北山・side ページ3

クリスマス、正月が過ぎて、三学期になった。
クラスの数人くらいは推薦や就職で進路を決めていて、これから試験を受ける奴らは追い込みの時期。

だから、早々と推薦で進学が決まった俺は、なんとなくクラスのめんどくさい案件とか引き受けるようになってた。

「ふふ、また北山くんがしてるの？」

放課後、週に２度の理科準備室の整理。担任が理科教師なこともあって、頼みやすいらしい。

放課後は塾や家庭教がって急いで帰っちゃうクラスメイトも多いから、どうせ暇だから変わってあげてた。

別に一人で出来る量だし、ぼんやり何も考えずにいられるこの時間は嫌いじゃないんだよな。

今日頼まれたのは、人体模型を磨くこと。
うげー気持ち悪…
でも、引き受けちゃったからな。

そう思ってたら、いきなりAが部屋に入ってきたから驚いた。

「A…どうした？」

「もともと、私当番だったし。
佐藤くんが、北山くんがやってくれるから行かなくてもいいよって言ってたけど、いつも一人でしてるかは寂しいかなって思って来てみたの」

「別に寂しくなんかないけどさー…

今日のは、ちょいキモいから一人でやるの嫌かも。Aも手伝って」

二人で一体ずつ、人体模型のパーツを外しながら乾拭きして磨いてく。

「今日の作業めんどくさいわ。来てくれて良かったかも」

「ねぇ、何で一人でしてるの？進路決まったなら来てくれる人いるでしょ」

「んー…たまには、一人になりたいし。
何も考えずに、何かに没頭する時間も良くね？」

「じゃ、私邪魔しちゃったかな」

「いや。…Aはさ…話してみたかった。色々」

「ん？どんな？」

「じゃー…今更だけど、何であんな時期に転校してきた？」

「お父さんがニューヨークに転勤になって、お母さんもテンション上がって付いてって。

私は日本に残りたいけど、一人であのまま山梨の高校に通うのって無理があったから、東京にいる親戚のお家に下宿してるの」

「嫌じゃなかった？高３で転校なんて」

「嫌だったー…。でも、絵里がいたから良かったかな。

絵里のおかげで、北山くんとも話すようになったしね」

「ビックリしたわ、絵里と同中なんてさ」

「私もだよ。…私ね、最初絵里と北山くんは付き合ってるのかと思ってた」

その言葉に、何故か分からないけど胸が少し痛くなった。