アマレット (ページ18)

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店長と松岡さんは初対面じゃないのか、話し合いは穏やかに雑談を交えながら明るい雰囲気で進んでいく。

北山くんもきちんと自分の意見や案を出して、真剣な眼差し。

私は、いきなりこの話に参加してるから３人の話を聞くだけしか出来なくて。

昼過ぎになった頃、打ち合わせは終わった。

「では、またご連絡差し上げますので、よろしくお願いします」

二人が帰ってくのを店長と松岡さんは見送って、姿が見えなくなったら色んな意味で気が抜けた。

「ごめんね、いきなり参加してもらって。
デパートのお客様だから、女の人の意見も聞くといいかなってさっきいきなり思いついてさ」

「ビックリしました…あ、でも参加できるのは凄く嬉しいです。ありがとうございます」

「うん、俺が対応できない時とかお願いしちゃうからよろしくね」

「はい！ありがとうございます」

店長は満足そうに仕事へ戻り、私は休憩に入った。
さっきの打ち合わせのことを考えてると、やっぱり気分が落ち込む。
仕事のことじゃなくて、北山くんに気づいて貰えなかったこと。

高校を卒業してから、頻繁にではないけど、ちょこちょこ北山くんのこと思い出してた。
あの時、勇気を出していればとか。
あの後山田くんと付き合い始めたけど、結局上手くいかなくなってわりと早くに別れてしまったとか。

私の頭の中ではどんどん美化されていく存在だったけど、北山くんからしたら、私なんかただのクラスメイトだったか…。

しかも！
結構私の名字珍しいんですけど。
それ聞いても思い出してくれないなら、完璧に忘れられてるな。

「お疲れさま。どうしたの？全然食べてないじゃん」

「あ…お疲れ。ちょっとね」

駅ビルの休憩室は、テナントのみんなで使ってるから色んなお店の人と知り合える。
若菜はビルの１階にあるアパレルの店員で、同じ年齢ってこともあってすぐに仲良くなった。

「ふーん。で、落ち込んでるんだ」

「そりゃ…落ち込むよ。好きだった人に忘れられるんだから！」

「逆に良かったじゃない？コレで、過去の呪縛から抜け出せるってことで」

前に酔った勢いで、若菜には自分の恋愛遍歴を洗いざらいぶちまけたことがあって、それ以来、彼女は私の頼れる相談相手となった。