アマレット (ページ14)

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７年前の春ページ14

驚いて、条件反射みたいに繋がれた手を引っ込めようとした。
けど、それをさせてくれなくて、ギュッと繋ぐ力は強くなる。

顔を上げたら視線がぶつかった。
やばいのかも。これって、流されるパターン？
この１分程度の時間が、なんだかすごく長く思えた。

「朝比奈さん？」

でも、そんな時間は終わってすぐに現実に引き戻される。
背後には山田くんが立っていた。

咄嗟に、どちらからともなく繋いでた手を離す。

「俺は駅まで送っただけ。じゃ、あとはよろしくー」

何か言いたげな山田くんに北山くんはそう告げて、私には目も向けず去っていってしまった。

残された私は色んな感情が整理できなくて、本気で泣きそうになる。

「…朝比奈さん、北山くんのことが好きなんだね」

「…違う」

「違わないよ。…でも、あの人彼女いるでしょ」

「いるよ。そんな人、好きになるわけないから」

「素直じゃないんだね。…じゃあさ、俺の事利用して良いよ」

その言葉に、溢れそうだった涙が引いた。
意味が分からなくて顔を上げると、ニッコリ微笑む山田くん。

「忘れるために、俺の事利用していいから。

…良かった。俺の最寄り駅がここなんだよ。
偶然でも、二人がどうこうなる前に登場できて良かった」

「…ならないよ。なるなら、もうとっくにどうにかなってるでしょ」

山田くんの言うとおり。
私は、北山くんのこと好きなんだね。
認めたくなかったけど…

「デート、何処行こうか？映画にする？思いきってディズニーとか？」

無理してるのかもしれないけど、明るく話続ける山田くんに少し救われた気がした。

きっと、もう北山くんには会うことは無いから。

この気持ちは、気づかなかったことにして封印しよう。

数日後に山田くんと二人でディズニーへ行って、そのまま付き合うことになった。

これで、良かったんだ。