アマレット (ページ13)

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７年前の春ページ13

カラオケが終わって、そろそろ解散することになった。

こうやってみんなで遊ぶ時は、家の方面が同じの男の子が女の子を送るっていうのが暗黙のルールになってた。

「A、そろそろ行くか」

「うん」

私は斉藤くんと同じ電車の路線を使ってたから、いつも送ってもらう。
みんなの輪を離れようとした時、スマホが震えた。

北山くん俺が送るから。斉藤のこと撒いてきて

ビックリして、思わず顔を上げて北山くんを見たけど、当の本人はそ知らぬ顔。

どうしよう…どうやって離れよう。

「斉藤くん、私雑誌選んでから帰りたいから先に帰ってて」

「え？でも夜道危ないだろ」

「従兄弟がここの本屋でバイトしてて、もうすぐ終わる時間のはずだから一緒に帰るよ。

ね、いつも送ってくれてありがとう。楽しかった」

「なんだよー。何か、泣けること言うなよ」

こうやって斉藤くんに送ってもらうのも、きっと今日が最後だから。
ちょっと遅くなっても、安心して遊べたのは斉藤くんのおかげだもん。

「じゃあ、またな！」

「うん、ありがと。おやすみー」

一人になって、本屋で立ち読みをしてると北山くんから電話がかかってきて、少ししたら来てくれた。

この人の真意が分からない。
本屋から連れ出されて、駅の近くにあるベンチに座って他愛の無い事を話し出す。

大学行ったらさバイト何する？
サークルはどんなの入る？免許は取るの？

そんなこと、どうでもいいのに。
私が知りたいのは、どうしてわざわざ二人になったのかってこと。

３月の夜は、まだ真冬と同じで寒い。
爪先がじんじんしてきたし、寒くて震えてきた。
指先が冷えて動かなくなってきて、これ以上ここで座ってることが辛くなる。

「ごめん。寒いし、帰るね」

「えぇっ！？ちょっと、まだ話…」

「だって寒いんだもん。ほら、指が動かなくなってきた」

何も考えずに差し出した指に北山くんが触れた。

その指が暖かくて、泣きそうになる。

「暖かいんだね…」

認めちゃダメ。このまま暖めて欲しいとか思っちゃダメなんだ。
だって、この手は他の人のモノなんだから。

なのに、なんでかな。
北山くんは、そのまま手を繋いできた。