７年前の冬 ページ11
あれから理科準備室の当番の日は、自然と足が向いていた。
北山くんは相変わらず一人でゆっくり作業してて、結構楽しそう。
「あれ、また来てくれたんだ」
「うん。また一人引き受けたんだ」
「みんなめんどくさいから嫌がるよなぁ。
Aは嫌じゃないの？」
「この前片付け終わったらココア買ってくれたじゃん。味をしめた」
「まじかー。俺なんかに餌付けされんなよ。
じゃ、さっと終わらせよーぜ」
自惚れかもしれないけど、手伝いに行くと嬉しそうな顔してくれる気がして。
彼と別れてポッカリ空いた心の隙間を、北山くんに埋めてもらいたいんだ。
だから、好きなワケじゃない。
きっと誰でもいいんだよ。
でも、所詮北山くんって他人のモノ。
いつも通り理科準備室へ行ったら、中から甘い声。
すぐに察したよ。�猯菷�ちゃん�瓩�いるんだなって。
少しだけ様子を伺ってると、何か私とは当然だけど接し方が違う。
「ヒロくーん、これどうしたらいいの？」
「そんなの考えれば分かるだろ」
「分からないから聞いてるのにぃ」
「まじ、手伝いに来たのかお邪魔虫かどっちだよ」
私には、北山くんもっと優しいよ？
でも、それって友達だからだよね。
あの子は彼女だからわざわざ優しくしなくて良くて、素でいられるんだ。
次の当番の日も一応行ってみたら、また彼女がいた。
しかも、いちゃついてるとこまで見ちゃったし。
私はもうお役ごめんな感じかな。
ただの友達の私より、彼女がお手伝いに来てくれた方が嬉しいに決まってるしね。
「A、最近当番来ないじゃん。玲美ちゃんから何か言われた？」
「この前行ったら、彼女いたらお邪魔かなーって思って。
いい彼女だね、嬉しいでしょ」
「…うん、まぁ」
一瞬で表情が曇ったような気もする。
何よ、その微妙な反応。
キスしてたくせに。
「Aさ、ミツと喧嘩でもしたの？」
突然絵里から聞かれたのは、卒業式まであと数日の頃。
「してないよ、何で？」
「いや…何となく。ちょっとぎこちない感じがして」
「全然。そもそも、特別に仲良しってわけじゃなかったし」
「うん…でも…」
何か言いた気だけど、絵里はそれ以上は追求してこなかった。
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作者名：さくら
| 作成日時：2016年9月30日 15時
