触れられない ページ18
珍しく予定がある日曜日。
３年前から、４月頭の晴れた日曜は行く場所が決まってる。
「よし、行くか」
前に住んでた家の近くにある桜の木。花見スポットがすぐ近くにあるため、休日なのにいつもそこには人がいない。
正に、穴場。
木の下に置いてあるベンチに座って、しばらく眺める。
「今年も綺麗だな〜…」
スマホを手にして、写真を撮る。
いつの間にか、桜関連の写真がたくさん貯まってしまった。
スクロールしてぼんやり見てると、足音がした。
特に気にも止めなかったけど、自分の前で立ち止まった気配がして、ふと顔を上げると、そこに立ってたのは…。
「みっくん…」
北「…久しぶり…」
時が止まる。どうしよう。何か言わなきゃ。
健永が謝れって言ってたし…でも何て？
どれくらい沈黙が続いたか分からないけど、突然強風が吹いた。
その勢いで、どこからか飛んで来たビニール袋がみっくんの顔を直撃。
北「えっ…おわっ…」
突然過ぎてもがきならがビニール袋を取るみっくんを見て、思わず吹き出してしまった。
北「…笑うなよー…」
「ごめんごめん。ピンポイント過ぎて、可笑しくて」
みっくんも恥ずかしそうに少し笑った。
今ので空気が少し解れた。
北「…横、いい？」
「うん…」
少し横にずれると、みっくんが座った。
微妙な距離。触れられない。
これが、私があの時作ってしまった距離。
「…あのさ…」
北「あの…」
ほぼ同時に口を開いた。
「…どうぞ…」
北「あの…いきなりLINEしてごめんね。
迷惑したかなってちょっと思った…」
全然迷惑じゃない。でも、それを言葉にしていいのか分からない。
「なんで？…謝らなきゃなのは、私だよ…」
北「え？」
「…色々と、ごめんなさい。ずっと謝りたかった。みっくんが大変なとき、支えられなくて」
北「…いやAちゃんは悪くないよ。
環境についていけなかった俺が悪かったから」
「…でも！その期間は私が受け入れてれば良かっただけなのに…」
みっくんがじっと見つめてくる。切なそうな、苦しそうな顔。
そっと、指が伸びてきた。
北「…何で？」
北「フッたの、そっちじゃん…。泣くなんてズルいじゃん…」
その言葉で、自分が泣いてる事に気づく。
みっくんの指が届く前に、自分で涙を拭って俯いた。
その指が、行き場なくして寂しそうな顔になる。
それから、しばらく沈黙が続いた。
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作者名：さくら
| 作成日時：2015年11月4日 21時
