撮り貯め Ki ページ14
〜Ki・side〜
あのLINEをしてみた日以来、俺の微妙にくすんでた毎日が少しだけど彩りが復活した。
3月も終盤となり、色んな場所で桜が開花していく。
見つける度に写真に修めるけど、まだAちゃんに送れてはいない。
オーソドックスに綺麗に咲いた桜の木、桜をモチーフにしたカフェの春限定ドリンクや、永遠と続く桜並木とか。
どんどん俺のメモリーは桜に関する写真が増えていくのに、肝心の事が出来ない。
今日もグラウンドでレッスンの準備してると、担当してる中学生たちが少しずつ集まってきた。
ストレッチ始めたり、リフティング始めたり、個々にレッスン前のウォーミングアップをしてる様子を横目に、俺は近くに咲いた桜の木を眺める。
『…コーチって、桜好きっすよね』
「え!?」
数人の生徒が俺の周りに来た。
『なんか、毎年桜眺めて考え込んでません?』
『しかも、結構寂しそう』
『あ、女だ!』
「うるせーよ…」
図星過ぎて落ち込む。俺の反応に生徒も心配になるらしい。
顔見合わせて、一人がスッと何か差し出してきた。
「…何?」
『いや、なんかトレーナーが、コーチに桜グッズプレゼントしろって言うから…』
そう言って差し出してきた、桜フレーバーのクッキー。
『俺も』
『俺も。コーチ、元気だしてくださいねっ』
次々渡される、桜グッズ。桜塩、桜入浴剤、桜ボールペン…
トレーナー…って大倉か。くそー余計なこと言いやがって。
でも、大倉は何気無しに言ったんだろうけど、生徒たちは本当にプレゼントしてくれた。
それは素直に嬉しい。
入社当初はあんなに生徒と距離あったのに…ここまで縮められたんだな。
それを思って、少しだけ鼻がツンとした。
「…ありがと。俺、もう一回頑張ってくるわ」
『…コーチ、やっぱフラれたの…』
『頑張って下さい!!コーチはチビなとこ以外はイケメンですよ!
これは、うちのチームの総意っす!』
「はっ!?お前らそんなこと思ったのかよ!?
ぜってー俺の背抜くなよ!抜いた奴からベンチだからなー」
『えーー!!それじゃ11人残らないっすよーっ
コーチよりチビなの何人いると思ってるんすかっ』
「俺は今はめり込んで…っ」
こんな風にジャレることも出来るようになった。
今なら、Aちゃんに会いに行けるかも。
そんな気がする。
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作者名:さくら | 作成日時:2015年11月4日 21時