震える指で Ki ページ12
〜Ki・side〜
いざ、既読に変わったところで二人の間が何か変わるわけじゃない。
当然三年前の質問に対しての返事なんて来ないし、新しいメッセージが来るはずもない。
やっぱ、偶然手が触れて開いちゃったとか、そんなとこか…。
期待しちゃダメだよな。
そう思いながら数日たったある日、いつも通る仕事帰りの道で、引き寄せられるように1本の桜の木の前で足が止まった。
1輪だけ、フライングで咲いている桜。
この季節になると、どうしてもAちゃんを思い出す。
桜は、特別な人と見たいと言ってた。
今ごろ、誰と見ようとしてるんだよ?
Aちゃんの横にいるかもしれない誰かを想像して、胸がぎゅっと苦しくなる。
こんなに月日が経つのに、何でこんなに忘れられないんだろう。
でも、ふと思った。
会わないから忘れられないんじゃないかって。
会えないから、頭の中でどんどん美化されていって、手が届かない存在に作り上げてしまってるんじゃないのかなって。
だから、きっかけを作った。
1輪だけ咲いた桜を写真で撮って、Aちゃんに送ってみた。
情けないけど、その時の俺は指が少し震えた。
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作者名:さくら | 作成日時:2015年11月4日 21時