第26話 ページ26
『勝手な事言わないで！何も知らないくせに！』
「ちょっと、アリス！？」
「ひぃっ！？お、落ち着いてくれ！ 別に君を怒らせたいわけじゃ、」
不安定な足で少しよろけたアリスを、エリザが咄嗟に支える。座らせようとするも、彼女の力は強かった。男は先程まで穏やかな瞳をしていた少女がまるで豹変したかのように自分を刺すような目で睨みつけていることに動揺を隠せずにいる。街の真ん中で中年男を怒鳴りつける少女の図は、街ゆく人の視線を集めていた。
『こんな事して楽しいの！？最近のメディアはずっとそう！彼らの事何にも理解してないくせして、知ったかぶりしてデタラメな記事ばかり作って！』
「な、それは……」
『彼は優しくて、そして強いの！これ以上彼の事を悪く言ってみなさい、絶対に許さないから！！』
大人しいと思って嘗めていた少女に逆に捲し立てられすっかり萎縮した男は、エリザに助けを求めるような視線を送る。しかし彼女の視線も鋭いものだった。
「……アタシはその時、気絶してたからよく分からない。けれどほんの一瞬、誰かに優しく運ばれた……そんな感じがしたの。それが彼なのね」
『エリザ……！』
「確証はないけれど、アタシはアリスを信じる。それだけよ。さあ、用が済んだらどっか行って！」
アリスとはまた違う、冷静ながらも威圧感のある声色に男は後退り、｢すんませんでしたぁ〜！｣ と情けない声を上げながらよろよろと走っていった。その背中も精一杯睨んでいたアリスは、力が抜けたように車椅子に座り込む。
「アリス、無茶しないで」
『ごめん……。どうしても許せなくて』
エリザは椅子にもたれるアリスの頭に軽くチョップを見舞う。先程の会話で彼女には言いたいことやら聞きたいことやらが山積みになったが、それは後にして。
「……ねえアリス。アタシはよく知らないけど……アリスがあんなに庇うくらいの人なら、信じていいのよね」
エリザは笑みを称え、尚且つアリスを真っ直ぐ見つめて問う。彼女はこれだけ聞ければ十分だった。少しだけ目を見開いたアリスをじっ、と見つめるエリザに、アリスは力強く頷いた。
『勿論。彼は、私達の救世主だよ』
「うん！それだけ聞ければ満足よ。どんなメディアより信憑性あるわ」
誰に何を言われようが揺れ動くことのない言葉。その返答に満足したエリザは頷き、先程チョップをくらわした頭を優しく撫でると、アリスは嬉しそうに頬を染めて微笑むのだった。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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