第9話 ページ9
引き篭もりの老体とは考えられないほどのスピードであのすばしっこいソニックを捕まえると、持っていたドライバーでソニックをつつく。どうやらソニックを本気で機械と信じ込んでいる様子で、仕組みを調べるために解体しようとしているのだろう。勿論そんなものはないのだが。
ドライバーで体をまさぐられるくすぐったさに、チャックの腕から逃げ出したソニック。チャックはすぐにソニックに狙いを定め、表情を真剣なものに変えるとドライバーを構えた。
「逃げるなっ！！」
そもそも、テレビを騒がせる謎の生物を前にして嬉々として、しかも解体するためにドライバーを構えるチャックの精神の図太さは一体どうなっているのか。吹っ飛ばされた反動で、ソファの上で頭上に星を散らして寝転がっているアリスの代わりに、クリスが声を上げた。
「あの、おじいちゃん。彼……ソニックは、機械じゃないんだ」
チャックは硬直し、目を見開いて息を呑む。力の抜けた手からドライバーが滑り落ちる。それがコロコロとカーペットを転がる中しばしの沈黙が流れたが、テレビから聞こえた幼い少女の声が部屋に響いた。
《こ、こないでくだサイ……こわいデス……》
《チャオ〜……》
ソニックは咄嗟にテレビを振り返る。そこには大きな看板の上に震えて蹲る薄茶色のウサギ、それに抱えられる小さな水色の妖精のような生物が、はしご車によって回収されんとされる場面であった。ソニックはその光景に声を上げる。
「……クリームにチーズ！」
「も、もしかして知り合い？」
『……え、何？クリームチーズ？』
クリスが問う。目を回していたアリスが、ソニックの声色の変化に飛び上がって彼とテレビを交互に見る。しかしテレビの映像に夢中のソニックからは、アリスの間抜けな問いかけに返答はなかった。
「このヘンテコな世界に来たのはオレだけじゃなかったのか！よーし待ってろ！」
意気込んだ様子で家を飛び出すソニック。クリスとアリスは慌てて追いかけ、玄関先で叫んだ。
「場所知ってるの！？」
『迷ったら今度こそ捕まるわよー！』
ソニックは速い。出ていくのも速ければ戻ってくるのも速い。綺麗に整備されている庭の植え込みに、ご丁寧に2箇所を貫通し戻ってきたソニックが困ったように笑うのをクリスは呆然とし、アリスは苦笑を浮かべながら出迎えた。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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