第39話 ページ39
side アリス
俯く私は顔を上げ目を見開く。それって、とソニックに確認をとる間もなく宙を浮いた私の体は、あっという間に彼の腕の中に収まっていた。俗に言うお姫様抱っこだ。唐突な出来事に頬が熱くなる。
『な、えっ！？重くないの！？』
「車椅子の時より全然軽いぜ。しっかり捕まってろよ！」
それからのソニックは止まらなかった。木を飛び、ビルを飛び、川を飛び。車椅子で同じ事をした時とは全く違う。ソニックの肩にがっちりと抱きつく私に、ソニックは笑い声をあげる。
「何だよアリス、怖いのか？」
『だって、速っ』
「OKOK、舌噛むから静かにしてな」
話しかけたのはそっちなのに、と眉間に皺を寄せれば、あしらうような笑顔を向けられる。そんな事を言いながらもソニックは私の事をしっかりと抱きかかえてくれている。……許してあげよう。
「よーし、飛ばすぜ！」
軽快な掛け声への返事代わりに、まだまだ増していくスピードに振り落とされないよう、首に回していた腕の力を強めた。
＊
「この辺りでいいか」
『すごい……。きっと電車だったらまだまだだよ』
シルバーバレーに到着した。優しく地面に降ろされたものの未だ身体に残る浮遊感に惚けていると、ソニックは見回していた大きな目を一点に止める。
「見てみろよ、アリス」
『え？わぁ……！』
鮮やかな緑に散りばめられた桃、黄、白が、視野いっぱいに映された。それはこの広大な森の中だと規模は小さいものの、花畑と呼ぶのにはちょうど良かった。良い香りに誘われた蝶も、嬉しそうに羽ばたいている。
『知らなかった。こんな綺麗な所あったんだね』
「ん〜、やっぱり花はいいなぁ」
『ソニック、花好きなの？ちょっと意外かも』
「オレにだって自然愛護の心はあるさ」
いつの間に桃色の小さな花を摘んでいたソニックに私は思わず笑う。一網打尽に駆け回って花なんて散らして走りそうだなと思っていたのは黙っておこう、と笑顔の裏で考えていた。
「よし、アリスは此処に居てくれ。すぐに終わらせてくる」
『え、でも』
「エッグマンが居るうちは危険だ。だからいい子で待ってな、girl」
持っていた花を私の頭に挿し、ウインクをした彼に何も言えず。ソニックは直ぐ様残像を残してどこかへ行ってしまった。
『……そういえば私、道案内してないな……』
彼を見送る他無かった私の頭上の花には、いつの間にかやって来たアゲハ蝶が羽を休めていた。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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