第32話 ページ32
どれくらい走っただろうか、アリスは膝に手をついて呼吸を整えた。無理して走るな、という先日のドクターストップは今の彼女の頭からすっぽりと抜けていた。
野次馬の騒ぎが大きくなっているため近付けてはいる。あともうひと踏ん張りだ、と再び駆け出そうとすると、頭上でプロペラ音と少女の声が響いた。
「ソニックー！受け取ってー！」
エミーだ。テイルスが操縦するトルネードの後部座席で、淡く光る金色のリングをソニックに向かって投げる……が、彼は空中でバランスを崩してリングを取り損なってしまった。
「No waaaaaay!!!」
散々E-11にボール遊びのごとく遊ばれていたソニックの形勢逆転のチャンスだったが、頼みの綱はあっけなく下へと落ちてしまった。その真下には丁度アリスが空を見上げている。
『何あれ……？取っておいてた方がいいのかな』
あのソニックがあんなに取り乱すのだ、大事なものに違いない。そう判断したアリスは落ちてくるリングを受け止めようと必死に身構えた。
『運動は苦手だけど……取るだけなら多分いける！
とりゃ─────っ！！』
治りかけの足に鞭打ちジャンプしてリングに飛び付く。胸の中にしっかり収めたアリスは安堵の溜め息と共に地面を擦って転んだ。勢いのあるジャンプ後の事は何も考えていなかったらしい。
これは両膝擦りむいたな。そう確信したアリスだったが、ひとまずリングの無事を確認するために手を開く。そこには手のひらサイズの淡く光る金色が…無い。
『え、何で！？ちゃんと取ったのに！！』
あたりを見回してもそれらしきものは見当たらない。しかし撮り損ねたわけでもない。ちゃんと手のひらに収まる感覚をこの手で感じていた。そんな確信がアリスにはあったが、手を振っても服を叩いても無いものは無い。
『はぁ、骨折り損……いや今は擦りむき損ね……』
「うわあ────────っ！！」
遅れてやってきた足の痛みにほろりと涙を浮かべるアリスの耳に飛び込んできたのは、聞き慣れた弟の声……否、悲鳴。咄嗟に空を見あげれば、空に浮かぶ丸い球体のロボ、その先端に必死にしがみつく少年……クリスの姿があった。
『嘘……！？クリスッ！？』
足の痛みなどすっかり忘れ、アリスは再び駆け出す。
クリスの行方を追う為に空を見上げて走り続ける彼女には、胸元で揺れるネックレスのリングが鈍い金色の光を宿していた事など全く気付かなかったのである────。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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