俺様、何様、登坂様 (ページ14)

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王子様ページ14

「うーん。別に大切にとっておいたものでも無いだろうし、Aが気にするほどのことでもないと思うけど」

「わかってるんだけど…。でも、自信がないの。私が一番だっていう自信」

「付き合ってんのに？」

「うん。ヨリ戻したらどうしよう」

「…」

「元カノ、すごく美人で、スタイル良くて性格もいいの。そして、臣が一番好きだった人」

彼女からのメッセージにあった、“いつか結婚したいね”の文字。

嫌でも、その時の風景を想像してしまう。

あの部屋で、あのベッドで、二人は愛し合っていた。

そう思うと、胸が焼け付くように痛くなる。

「つらい…のに、臣は何も言ってくれない…」

たった一言でいい。

安心をくれる言葉がほしい。

「…好きだよ、A」

すとんっと胸に落ちてきた直人の優しい声。

ぼやけた視界で、前を見ると、優しく笑う直人と目が合った。

「…って、言ってほしいんでしょ？」

うんっと頷いたとき、携帯が鳴った。

ディスプレイに表示されたのは、『登坂広臣』の名前。

「おみ、」

「あーあ、王子様がやってきたか。早く出てあげたら？」

「今日の事言ってない…」

「いいから出ろって。きっと心配してる」

「うん、」

今は話したい気分でも、会いたい気分でもないけれど。

意を決して通話ボタンを押した。