【第五人格】アップルティに深淵を【短編集】 (ページ4)

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監禁カウントダウン / 納棺師ページ4

夢主ハンター、社交恐怖オドオド系解釈

「…Aさん、」

「イソップぅぅぅ…」

力無い声で僕の名前を呼ぶAさんが、ぐり、と僕の腹に顔を擦りつけた。どうやらゲームで負けに近い辛勝だったらしい。

僕の部屋に来た後、流れるような動作で膝枕状態になった彼女。それでも負けていないところは流石だ。

きつく回された腕と、艶やかな髪。人間ではないらしい彼女の顔は恐ろしいほどに整っていて、美形揃いの荘園でも一線を画している。

ここ荘園に来て社交恐怖症が出たとき、顔触れの中で唯一同情も慌てもせず僕に大丈夫だよ、と笑いかけてくれた人。

ああ、あの後はまさかハンター陣営だとは思わなくて、びっくりしたな。

でも、“皆には内緒ね”と言って二人きりで自分の立ち回りの癖や、スキル等を教えてくれたのは本当に彼女の優しさが成せるところだと思う。
その後のゲームではこてんぱんにやられたけど。

「もう本当今回何もできなくて一緒に鬼やってたジョゼフに怒られた…」

「ジョゼフ…というと…」

「ああごめん、サバイバーには余り聞き馴染みがないよね。写真家のことだよ」

そのままの態勢でゆるり、笑って僕を見上げた彼女にドキドキする。

結われていないふわふわの髪の毛からはどうしようもなくいい香りがして、ああ、なんでこんなにも距離が近いのに、僕らは付き合っていないんだろう。

他の男の人とあんまり仲良くしないで、なんて。そんなこと、言える立場じゃない。

好きです、ってたった一言口に出せばいいだけなのに、君には感じないはずの社交恐怖が邪魔をする。

“スキ”のふた文字はたった二音の羅列なのに、あまりにも大きな力を持っていて。

その効果は二律背反。

もしかしたらもう二度と彼女が僕に笑いかけてくれることはなくなるかもしれない。

そう考えたら、怖くてたまらなくて、やっぱりこの気持ちは心の中にしまっておくべきなのだと、そう思った。