賢い狐にご用心 Ⅱ (ページ35)

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仔犬が二十一匹ページ35

　
　
　
『んん………ここ、は…』

暗くて、薬品臭くて、無機質な場所

……暗いのは夜だからだな

医務室にいるんだなぁ、ってまだ少し朦朧とする頭で考える

そんな状態でも、視覚ははっきりと世界を伝えてくれるんだね

その証拠に僕の左側に綺麗な黒髪が見える

デイヴィスの頭だとすぐにわかった

運動着のままで、僕の手を握ったまま眠っている

……あぁ、ボロボロじゃないか

服は破れているし、手だって包帯だらけ

少し首を動かすと他のメンバーも見えた

壁に寄っかかったり椅子に座ったりして寝てる

みんな、傷を処置した跡がある

僕が覚えているところまではあんな傷なかった

『僕のせいで………ごめんね、みんな……』

思わず手に力が入った

ｸﾙ「ﾋﾟｸｯ)起きた、のか…？」

『デイヴィス……ごめんね』

ｸﾙ「なにを…何を謝る必要が？もう目覚めないかと思ったくらいだ……良かった」

『デイヴィス……泣いてるのかい？』

ｸﾙ「泣いてなどいない……涙ぐんではいる」

『正直でよろしい。みんな起こす？』

ｸﾙ「そうだな……おい起きろ」

ﾚｵ「ﾝｸﾞｯ………ﾝなにすんだ………って起きたのか⁉」

ｸｲﾝ「⁉う、うるさいぞレオ⁉」

ﾙｲ「君が一番うるさいよ……」

ﾁｪﾝﾄﾞ「る、ルイ。ちゃんと見ろよ」

ｼﾞｮﾆｰ「へあっ？お、起きてる…？」

ﾌｨｰ「心配した……」

皆の顔をまた見られたことが嬉しくて忘れかけていたが、今一番聞かなければいけないことがある

『試合は、どうなったの？』

ｸﾙ「ｯ…………」

ﾙｲ「それは、その」

ﾚｵ「……負けたよ。ボロ負けだ」

ｸｲﾝ「僕はやっぱりAの代わりにはならなかったよ」

そう言って苦笑するクインに視界が滲んだ

『ｯ…………ごめっ、ぼくっ』

ｼﾞｮﾆｰ「はっ⁉ちょっ、なんで」

ｸﾙ「だから泣くな」

『でもっ、僕が、防御できてればこんな…』

ﾚｵ「明らかに悪いのはアイツらだろうが！お前が気に病むことじゃねぇんだよ」

ﾁｪﾝﾄﾞ「もう誰が悪かったかなんて考えるのやめようぜ。Aが目覚めた。それだけで十分だろ？」

ﾙｲ「そうだね。生きてて良かった。A」

『……僕も、皆の顔がまた見れて嬉しいよ』

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今となってはいい思い出…ってね

「先生！飛行術のコツ教えてください！テストがあるんです！」

『やる気のある青年は嫌いじゃない。いいよ、スペード君』