ＦｉｒｓｔＬｏｖｅ６*･゜ﾟ･*:.｡..｡.:*･

その人はー高梨 ページ17

その人物が来たら、会議室へ通すように受付スタッフに伝えておいた。


約束の時間になり、スタッフから連絡が入る。


「ありがとう。すぐに行くわ」


駈け出す心臓の鼓動を抑えるように深呼吸して平静になるよう努めた。

相手がどんな出方をするのか未知数だ。

金銭が絡む話になるかもしれない。
そしたら私一人では留めておけなくなる。

まずは相手を見極めること。
そのためには冷静さを保たなければ…。


「失礼します」


ドアをノックしてから会議室の中へ入ると、先に中にいた人物は立ち上がって頭を下げた。

こちらを向いた顔を見て驚いた。
芸能界にいても違和感がない程の端正な顔立ち、スラリとしたスタイルの良さはスーツによって際立っている。

もしも10年前に出会っていたら確実にスカウトしていただろう。

彼女の婚約者がこれほどの相手とは想像していなかった。






「初めまして。平野のマネージャーを務めております、高梨と申します。
本日はわざわざお越しいただきありがとうございます、永瀬さん」


「マネージャー…」


落胆を隠しきれない声。


「本日、平野は仕事が入っておりまして…
私がお話を聞かせていただきます」


そう言うと永瀬さんはため息をついた。


「俺は…平野紫耀に話しがあったんです」


そんなことは分かりきっている。
相当な覚悟だったんだろう。
でなければ、事務所に直接電話してくるはずがない。

けれど、こちらにもこちらの都合がある。


「分かっています。…だからこそ、会わせるわけに行きませんでした」

「なんでですか？」

「平野は今、全ての思いを飲み込んで前を向こうとしています。
でも、あなたに会ってしまったら落ち着こうとしていた心が揺らいでしまうかもしれない。
それは避けたかったんです」

「…そんなん勝手や…」


漏れ出る関西のイントネーションに落胆の程が伝わってくる。


「申し訳ありません。
…平野へのお話はわたしが代わりに聞きます。
永瀬さんは平野と何をお話しになりたかったんですか？」

「…別に…ただ、直接会ってどんな人なんか知りたかっただけです」

「それは…なぜです？」

「……俺の知ってる平野紫耀は、好きな仕事しかしない、女をとっかえひっかえしてる遊び人。正直言って最悪な男です。けど…それ以外の一面もあるんかなって。あるなら自分の目で見てみたいなって…」


まっすぐに私を見つめる永瀬さん。

辛辣な言葉でも濁すことなく言う姿に、漠然と好感を抱いた。

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