ＦｉｒｓｔＬｏｖｅ６*･゜ﾟ･*:.｡..｡.:*･

はじまりの記憶６ーRen ページ14

大学4年、冬


電車を降りると早足でバスに乗り込む。

寒いからやない。

ついつい浮き足立ってしまうのは、、


「ももー！」


可愛すぎる天使のせい。


「これ、好きかなー？」


うつ伏せになって必死に体を持ち上げていたもも。
掴めるボールのおもちゃを見せると、じーっと凝視してからニターっと笑った。

その瞬間、全身から毒気が抜け、顔面の筋肉がふやけてしまう。


「ももーなんでそんなに可愛いんやー…」

「うー！うー！」


ボールをバンバン床に叩きつけてキャッキャしてるけどそれも可愛い。
なんもかんも可愛い、まさに天使。


「ももちゃん、可愛いってたくさん言ってもらえて嬉しいね」


Aさんがももの顔を見ると、ももはまたニターと笑った。

ももが笑うとAさんはたまらなく幸せそうに微笑む。

ほんまに世界一幸せそうに笑うから、俺まで幸せな気分になる。

いてくれるだけで人を幸せにできるなんて、子供は凄い。



と、部屋の片隅に前は見なかった子供用布団があることに気付いた。


「あれ？布団？」

「うん？あぁ、保育園で必要だから買ったんだ」

「保育園？え？もう行くの？」

「…うん。来週からね。ももちゃんももう６ヶ月になるし、希望してた園でちょうど空きができたから…」

「…でも…早ない？もっと身体休めた方が…」

「充分休めたよー」


あくまで穏やかに笑顔を絶やさず言うから、その先を言い辛くなる。
俺が口出すことやないのは分かってる。でも…


「…大丈夫なん…？
もしお金のことが心配なんやったら俺「永瀬くん」

「…」

「お金の心配されるほど、私情けない生活送ってないよ？
私とももちゃんが暮らしていくのに必要なことだから、そうするの。それだけ。
大丈夫だから。心配しないで？」


優しい声色で言うけれど、俺を見据える目にははっきりとした拒絶の意思が感じられた。
これ以上は踏み込まないで、と。


「ごめん、余計なこと言うて」

「ううん。
…こうして、会いにきてもらえるだけでもすごくありがたいの。
私たちのこと、知っててくれる人がいる。それだけで、、」


Aさんはももの小さな手をそっと握ると、抱きついてきたももを抱き上げて頭を撫でた。



…ほんまは、２人ごと抱きしめたい。


せやけど、今の俺は所詮、親に養われてる大学生。あまりに非力や。




２人を守れる力が欲しい。




Aさんが安心して頼ってくれるような、大人の男になりたい。


そしたら…

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