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35皿目 ページ35

情けない。

違う世界から来たばかりの後輩に無様な姿を晒すなんて。





俺には弟妹がいる。だから、昔から我慢してきた。

長男だから。お兄ちゃんだから。

親が自営業をしているから、弟達の面倒を見るのは俺の役割。


いつからか、俺は”仮面”をつけるようになった。

良い兄でいようとした。

それは、弟達のためでなく自分のためにやってきたこと。

良い行いをすれば他人から”良い人”というレッテルを貼られる。

自分の感情を隠すのは一つの特技になった。

俺は”普通の兄”、”普通の男”であり続けた。




でも、Aは違った。

俺のことを、”本心”を見透かすようなあの茶色い瞳に何度も動揺した。

疲れを隠しても、本音を隠しても

あいつには全て理解されてしまうのではないか。

最初はそれが怖かった。

でも、次第に、一緒に生活しているうちに、

お前には俺のことを分かってほしいと思い始めたんだ。

親でも気が付かなかった俺の”本心”に。





あれから俺は、Aが何も言わないのを良い事に、
Aの横に座り、肩に頭を乗せ、心地いい体温を自分の体に染み込ませていた。

心が暖かくなっていく。



しばらくして、外が暗くなった事に気がついた。



トレイ「・・・もう、こんなに暗く。すまない、病み上がりなのに。」


『だ、大丈夫です!

少し落ち着きましたか?』


トレイ「ああ。本当にありがとう。
お礼に何か夕飯を作ってくるよ。」


『そんな!大丈夫ですよ!
私も行きます。』


トレイ「ずっとここに”2人”でいたんだ。
今、外にいる寮生に会ったら、色々と詮索されるぞ。

いいのか?」



ケイトは察してるんだろうな。
現に、誰もAの部屋には来なかったし。




色々と頭で考えているのか、あたふたとしだしたA。

俺の中で今までに感じたことのない感情が湧き出した。



いや、もっと前から気づいていたが、気づかないフリをしていた。





トレイ「だから、ここで待ってろ。
俺が作る料理もおいしいぞ。」






長年の俺の”仮面”をいとも簡単に壊したんだ。


少し”意地悪”させてもらうぞ。

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作者名:みず | 作成日時:2020年7月1日 15時

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