第30話 ページ33
◇
班長の掛け声で皆掃除に取り掛かる。
朝食がまだなのでさっさと終わらせてしまおうと真面目に取り組む人が多い中、目の前ではくだらないやり取りが行われていた。
「悪い松田…そっちのチリトリ貸してくれ!」
「おうよ!その代わり後でちゃんと……返してく
「つまらん二点!」
陣平の寒いダジャレに降谷は厳しい点数を付けるも、楽しそうに笑っている。
つまらんとか言っときながら絶対好きでしょ!
そんな仲良さげな二人を、萩と諸伏は掃除の手を止めて眺めていた。
「すっかり仲良しになっちゃったなぁ、あの二人…」
「陣平ちゃんの親友の俺としてはちと、ジェラっちまうねぇ……」
「そう寂しがんなって…!萩には私もいるでしょ?」
何だか本当にしんみりとして言うものだから、私は萩の肩に手を回してにっと笑う。
すると萩は、でも〜とあざとく口を膨らませた。
「そういう尚ちゃんも、降谷ちゃんといい感じだったじゃん?」
え?どこが?と首を傾げると、さっき頭撫でられてたの見たよ、と告げられる。
それを聞いた諸伏が頬を少し染め、えぇっ!?と驚いてこっちを見た。
な…撫でられてたって、私が?降谷に?と頭にクエスチョンマークを浮かべて自問自答する。
先程の、わざとかどうかは知らないが彼にたんこぶを触られたことを思い出した私は、ああその事か、と納得した。
大方、距離が遠かったので私達の話している内容が聞こえなかったのだろう。
違うよと否定する私の言葉は、完全に勘違いしている二人には届いていない様子だ。
萩はジェラるぅ〜とほざいているし、諸伏はまだあわあわと顔を赤くしている。
「いや、だから違くて…!あれは降谷が私のたんこぶを──」
「「たんこぶ?」」
いい加減話を聞け、と私は痺れを切らした。
誤解を解こうと私が放った言葉に二人とも反応し、口を揃えてそれを復唱する。
ああもう、用具室での出来事を話したら、きっと降谷と同様に絶対呆れられるから黙っていようと思っていたのに!
えぇと…と私は口走ってしまったことを後悔しながら目を泳がせる。
二人の視線に話すしかないかと諦めてため息をついた時、少し離れた所から「萩原くーん!」という呼び声が聞こえてきた。
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作者名:りもねん | 作成日時:2022年5月28日 14時