第31話 ページ34
◇
萩を呼ぶ声に、私達は振り返る。
背の低い植木と柵を挟んだ先に、他教場の女子二人が笑顔でこちらに大きく手を振っていた。
「次の休みの日、ウチらの教場との合コン忘れないでねー!」
「ああ、任されて〜♪」
ウィンクをバッチリきめた萩は、いつもの
その隣で私は、自分の顔の良さをちゃんと解ってるなぁと苦笑する。
「イケメンいっぱい揃えてよー!隣にいる色白の彼とかー!」
「そこの金髪の外人さんとかー!」
一瞬諸伏の事かと思って彼を見るも、諸伏は私達と向かいあわせで立っている。そして萩の隣に立っているのは私。
"彼"って…と私はため息をつき、少し離れた所にいる降谷と顔を見合わせる。
その先で、こちらの会話を聞いていた班長の表情が険しくなるのが見えた。
私は昔から萩や陣平のような男友達とつるむことが多く、行動や容姿からもよく男だと間違われることも多かった。
だから今更気にもしていないが、見た目で決めつけられたその言葉に班長は気を悪くしたようだった。
確かに降谷が"外人さん"と称されるのはなんだかモヤモヤするので、私は班長の気持ちがよく分かった。
彼は容姿こそ目立つものの、日本で生まれ育っているので日本人に変わりは無いのだ。
恐らく彼女達に悪気は無かったのだろうが、何気なく出た言葉は私達に決して良い印象を与えるものではなかった。
「誰が外人さんだって?それに加賀利は──」
いつの間にかぬっと班長が現れていて、睨みを利かせる。
彼は彼女達に合わせて少し前屈みになっているが、それが余計に威圧感を醸し出していた。
あ、いえ……と、その圧に耐えかねて焦りだした彼女達は、くるっと向きを変えて逃げるように走っていってしまった。
「す、すみません教官……」
「「し、失礼しましたぁぁ!!」」
「教官じゃねぇっつーの!」
教官と間違われて少し不服そうな班長に、それだけ貫禄があるって事じゃね?と萩は笑って言う。
確かに班長はこの班の中で一番背が高くてガタイが良いし、その分貫禄を感じる。
陣平なんてこの前、目線が班長の顎くらいにしか届かなくて恨めしそうに彼を見上げていた。
かく言う私も身長はほぼ170cm程はあるものの、この班の中では一番背が低い。
女子としては十分身長ある方だと言われるが、やっぱり身長が高いのは憧れるのだ。
私は羨ましいなぁと思いながら、クリーニング屋の外守さんに制服を受け渡す班長を眺めていた。
204人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りもねん | 作成日時:2022年5月28日 14時