第21話 ページ24
◇
作業員の命綱が教官の首に巻き付き、簡単に言えば首を吊っている状態。
その作業員はぐったりと気絶しているし、屋根に登ろうにもまた踏み外す可能性がある上にそんな時間はない。
「おい、お前ら……やることは分かってるよな?」
伊達班長の言葉をきっかけに、拳銃、
「じゃあオレは土台の上のつっかえ棒かな?」
「私は保険医さんと他の教官呼んでくる」
「んじゃ野郎共……行くぞ!!」
オウよ!と意気込んだ伊達班長が合図を出すと、皆それぞれの持ち場に着く。
伊達班長の上に諸伏が飛び乗る様子を尻目に、私は射撃場を飛び出した。
途中でぶつかりそうになった掃除のおばさんに謝りながら、全力で廊下を駆け抜ける。
多分今は、昨日走った時よりも本気だ。
まず保健室に辿り着き、状態を簡潔に伝えて射撃場まで行くようお願いする。
保険医の返事も聞かないうちにまた走り出し、今度は教官室へ駆け込んだ。
「緊急事態です!射撃場で──」
教官を連れて術科訓練棟へ戻ってきた頃には、保険医もバタバタと応急処置の道具を抱えてやって来るところだった。
射撃場の扉を壊す勢いで開けると、丁度陣平が降谷に拳銃を渡していた。
「外したらブっ殺すぞ……
どこからか見つけたらしい銃弾を込めると、降谷は素早く構えて撃ち放つ。
それは命綱に見事命中し、落下してきた鬼塚教官と作業員を伊達班長と諸伏が受け止めた。
「鬼塚教官!」
そう叫んで駆け寄ると教官はむせ返り、先程まで止まっていた呼吸を再開する。
ほっと胸を撫で下ろして、保険医に後の応急処置等を任せた。
ワァァァ!と同教場のメンバー達からは歓声が湧き上がり、まるでお祭り騒ぎのようで。
「みんな……流石」
もちろん、と言った彼らとハイタッチやらグータッチを交わす。
そうやって笑う五人はとても眩しくて、私にはヒーローのように見えたんだ。
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作者名:りもねん | 作成日時:2022年5月28日 14時